テストテストテスト。 -


「えー、そういうわけで」


一体どういうわけか知らないが、壇上の先生はそう漏らした。


「もうすぐ中間試験なわけですが」



夏休みの間の出来事はどうなったんですか。





「何で休みが終わってすぐ試験…」


ヤマザキシゲルは誰にともなくぼやいた。

ちなみにここは教室。

そういえば第4話にしてようやくまともに授業を受けています彼ら。

ちなみに、シバサキサクラはといえば、ものの見事に寝ている。

彼女はつまらない授業や先生の雑談時は必ずといっていいほど寝ている。

どうしてそんなに寝てるのか。ちゃんと夜は寝てるのか。

疑問に思った誰かがそう尋ねたところ、


「まぁ、人並みに」


彼女の人並みの基準は不明だが、ちゃんと寝てはいるらしい。

寝ても寝ても寝足りない。そういうことらしい。

平和そうな寝顔の彼女を見て、ヤマザキは溜息をついた。

あんな風に平和に眠りたいもんだ。

ちなみに、先生も既に黙認している。彼女については、誰もが諦めていた。

起こしてもすぐに寝てしまうし、何より寝起き最悪。

起こされると、まるでメデューサのような目つきで起こした人物を睨み付ける。

その視線の前では、誰もが皆石になってしまうともっぱらのウワサだ。

まぁ、つまり彼女は先生のお話を聞いていないわけで。


「テスト目前だってのにそれでいいのか…?」


もちろん彼の呟きはシバサキサクラには届かない。

起きたら教えてやろう。そう決めた。

もちろん彼女を起こして教えようとは思わない。起きるまで待つ。

眠れる獣に手を出してはいけないと、死んだ祖母辺りが遺言に言っていたような気がする。

ありがとう祖母。あなたの教えのお陰で孫は今日も元気です。

窓の外を見つめながら、そんなことをぼんやりと考えていたら、白いチョークが彼の額を直撃した。

ちなみにこの先生はかつてピッチャーとして甲子園のマウンドに立ったこともあるらしい。

やっぱりあんまり元気じゃないかも。

額を押さえながら、彼はやっぱりぼんやりと考えた。





「んぁあ、よく寝た…」


そう言って彼女が目覚めたのは、夕方5時だった。

ちなみに授業は3時半に全て終わっていた。

律儀に彼女を待っていた自分は犬だろうかと、ヤマザキは少し自虐的に考えたりした。


「お前、そんなんで大丈夫なのかよ…」


彼女を待っている間に、彼は3本ほどカフェオレを消化していた。

ベコベコパックが、机の上に散乱している。


「何が?」


心の底から何も考えていないような声。


「…もうすぐ試験なんだけど」


「あぁ」


そういやそうだっけと彼女は呟いた。

がっくりと脱力する。自分が心配しているのがバカみたいじゃないか。


「勉強してんの?」


「いやぁ?」


「…そろそろマジメにやっとかんとダメだろ」


「そんなの授業中にちゃんと聞いとけば大丈夫だって」


そのセリフをあんたの口から聞くことになるとは思わなんだ。心の中だけで彼は呟いた。


「お前、よくそんなんで今まで大丈夫だったよなぁ…」


「あんたが全然できないだけじゃないの」


うぐっ、と彼はうめく。


「てめ、人が心配してやってるのに…」


「別に構わないわよ。気にしてもらわないで」


「こんにゃろ…」


このやる気ナシ女をどうしてくれようか。

少し考えた後、彼に1つの考えが閃いた。


「そこまで自信があるなら、勝負しようじゃないか」


「イヤ」


即答。ちなみに「勝負しようじゃな」の辺りで答えられた。


「…もちろんタダの勝負じゃない。負けた方は勝った方の言うことを何でも1つ聞くこと」


ピクリ、と彼女が反応した。


「何でも?」


「おう、何でもだ」


「なら受けて立ってあげようじゃない」


フフ、と彼女は不敵に笑ってみせる。

一体その根拠はどこからきやがる、と思いつつも、これでこいつも少しはやる気になったかと彼は考えた。

普段からサボり居眠りで出席日数が怪しいのだ。テストまでダメだったら、こいつの将来はどうなる。

せめて卒業くらいせねばダメだろう。ていうか、一緒に卒業したいし。

ここまで心配する義理はないのだが、やっぱり彼はほっとけないのだった。

犬だなぁ。4本目のカフェオレにストローを刺しながら、彼はぼんやりと考えた。

そんな自分が嫌いでもないから全くどうして始末が悪いというかなんつーか。

まぁ、こいつがやる気になってくれればそれでいいか。

楽天的にそう考えることにした。





もちろんよく一緒に授業をサボっている自分も勉強しなくてはならないが、

しかし彼女よりはまだマシだった。成績も中の上。

何気にテスト期間中はいつもマジメに勉強もするし、アイツに負けるこたないだろ。

そうタカをくくりつつ、しかし勉強することは怠らなかった。

勝ったら何をおごってもらうかなぁ。ヤマザキシゲルの頭の中にはそれしかなかったりした。





そんなこんなであっという間にテスト期間は過ぎ。

ヤマザキシゲルは、自分の出来にかなりの手応えを感じていた。

もしかしたらクラス上位にもいけるかも。

これならヤツがマジメにやっていたとしても負けることはあるまい。

そう考えてほくそえんでいたのが1週間前。

そして、テスト結果が知らされたのが今日。

勝負の行く末はどうなったのかと聞かれたら。


「…なんで」


喫茶店の中で悔しそうに呟く1人の学生。


「ま、当然」


人の頭くらいはありそうなバカでかいパフェを美味しそうに食べるもう1人の学生。

そのバカみたいな大きさのパフェは『30分以内に食べたらタダ!』という代物だったが、

それを食べている人物は時間内に食べ終わる気はさらさらなかった。ちなみに罰金2000円。


「お前、もっと早く食べろよ…」


悔しそうに呟くのはヤマザキシゲル。


「負けたヤツが何言ってんの」


のんびり食べるはシバサキサクラ。


「くっそ、何でこんな結果に…」


「言ったじゃない、授業中聞いてれば十分だって」


それだけで一体どーしたら学年12位になれるってのか。ちなみに彼は34位。


「ま、次頑張ったら?」


そう言ってシバサキサクラはチェリーを美味しそうに頬張った。


「てめぇ、次見てろよ…」


財布の中身を確認しつつ、うらめしそうに呟く彼。

実は彼女は小学生の頃まではかなりの天才だったということを、彼はすっかり忘れていた。

中学に入ってから成績が下がったのは、「面倒くさい」という理由だったことを、彼は憶えていなかった。

そんな彼女の得意科目は暗記。

特に、教科書の問題がそっくりそのまま出てきた数学の成績は群を抜いていたとか何とか。

そんなこんなで。


「はい30ぷーん」


店長の嬉しそうな声。

救われないのはヤマザキシゲル。

まぁ彼女の笑顔が見られたからヨシとしよう、それでいいじゃないかと考える彼はまるで犬のよう。

そんな彼の本日の出費は2100円(消費税込み)也。ご愁傷様。






                   - 了


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