|
君がいた奇跡 #2 - 学校が終わり、放課後、僕はまた病院に向かった。
行くまでの間、ずっとドキドキしていた。 何を話そう? どんなことを話せば、彼女は笑ってくれるかな? 学校のこととか? 趣味、とか? そう言えば、彼女は僕のことをどう思ってくれているのかな? そんなことを考えながら、歩いていると、ウキウキして、なんか楽しい気持ちになれた。 全く、つい先日両親が死んだというのに、不謹慎じゃないのか、僕? と、いつの間にか彼女の病室の前に着いていた。 ふー、と深呼吸をし、ノックをする。 「はーい、どうぞー」 中から、明るい彼女の声が聞こえた。 「こんにちは」 そう言って入っていくと、彼女、大山夏美さんは、眩しい笑顔で、 「あ、神崎君!」 と、嬉しそうな声をあげた。 瞬間、僕は今まで考えていた言葉を、全部忘れてしまった。 そのぐらい、彼女は可愛かったんだ。 「あー、えと、そのまた来たんだけど…」 とりあえず、適当な言葉で間をつなぐことに。 「迷惑、じゃなかった?」 「全然!それより、嬉しいなぁ。また会いに来てくれて。ありがとう!」 彼女は、ホントに嬉しそうだった。 そんな顔を見ていると、僕まで幸せな気持ちになってくるから、不思議だ。 「待ってて、今、リンゴ剥くから」 「あ、そういうのは僕が…」 「だーめ。お客さんを迎えるのに、どうしてお客さんにそんなことさせなくちゃいけないの? いいから、座ってて。ね?」 「うん、それじゃお言葉に甘えて」 そうして、僕は彼女の横顔を見つめていた。 開け放たれた窓から吹き込んでくる風に、彼女は今にも吸い込まれそうで… 守ってあげたい。そんな気持ちになる。 そうしてしばらくみとれるように見ていると、それに彼女が気付いた。 ロングの髪を掻き上げて、穏やかな笑みを浮かべる。 それに僕も笑顔で返した。 そうしたやりあいが、とても心地よい。 「はい」 そう言い、フォークに刺したリンゴを差し出してきた。 「あ、ありがとう」 そして、リンゴを受け取ろうとした瞬間、手と手が触れあう。 「ぁ…」 「ぇ…」 そうして、二人して固まること数秒。 ようやく、はっとなって、 「ありがとう…」 もう一度そう言ってリンゴを受け取った。 しゃくしゃくと、音を立ててリンゴを食べる。 部屋には、その音しか聞こえなかった。 そっと彼女を見ると、彼女は顔を赤くして、下を見ていた。 僕も、何故だか下を見てしまう。 さらに沈黙。 でも、全然気まずくはなかった。 「おいしい?」 しばらくして彼女が聞いてきた。 顔がまだ、赤い。 「うん、とっても」 「へぇ。じゃ、一口ちょうだい」 そう言って、僕が食べていたリンゴを取る。 あ、と声を上げる前に、彼女は僕がかじった所をかじっていた。 「おいしいね」 「う、うん」 そんなことより、それって… そう言おうとして、言えなかった。 言えないって、そんなことは。 「あ、そーだ」 話を変えるため、僕はわざとらしく提案した。 「大山さんって、名前、夏美って言うんでしょ?」 「うん」 彼女はまだリンゴを食べている。 「じゃ、夏生まれ?」 「そ、7月7日。七夕なんだ。 なんか、嬉しいよね、こういう日に誕生日って。 愛し合う二人が一年に一度会える日。 そんな日に自分が生まれたなんて、なんかすごいなぁ、って思う。神崎君は?」 それを聞いて、僕はちょっと嬉しくなった。 何故なら、 「僕も、一緒。誕生日、7月7日なんだ」 そーいうわけで。 「へぇ、それじゃ、誕生日、一緒に祝えるね。嬉しいな」 ホントに、嬉しい。 こんな偶然、世の中にはあるもんだ。 「うん、そうだね、大山さん」 「あ、そうそう」 僕の言葉を聞いて思いだしたように、今度は彼女が提案してきた。 「何?」 「大山さんなんて、他人行儀な呼び方しないでいいよ。夏美、でいいから」 「え、ホント?…ありがとう」 何に対して礼を言っているのかよくわからなかったけど、とりあえずそう言った。 「あー、なら僕も、秀人、でいいよ」 ちょっと照れながら、そう言う。 頬が熱くなっているのが、わかる。 「え、うん。わかった、秀人」 「ああ、うん。夏美」 そうして、またしばらく停止する僕達がいた。 なんか、照れてしまう。 いつか、自然に呼び合える日が来るのだろうか。 そうなりたいモノだ。 しばらくそうはなりそうもないけど。こんな調子じゃ。 それから、他愛のない話をして、二人して笑いあっていた。 その間、僕はずっと幸せな気分だった。 神様、もし、こんな二人を見ているのなら、どうか、笑ってやって下さい。 # 「それじゃ、またね」 「うん、また」 夕方頃まで話した後、彼は家へと帰っていった。 彼が扉を閉めて足跡が遠ざかってからも、しばらく胸の高鳴りが止まらなかった。 「はぁ…」 何故か、彼がいなくなってしまうと溜め息をついてしまう。 いや、いないときはいつでもそうだ。 何でだろう… 不意に、こんこん、とドアがノックされる。 一瞬、心臓が止まるかと思った。 入ってきたのは、看護婦さんだった。 なぁんだ、と安心とともに、残念でもある。 そんな気持ちに少し戸惑いを覚える。 看護婦さんは、検温器を差し出しながら、訊ねてきた。 「今の、彼氏?」 優しそうな微笑みを浮かべながらも、興味津々といった様子だった。 「え、やだ、そんな、ちが、違いますよ!」 慌てて弁解する。 顔が、熱い。 「でも、好きなんでしょ?」 「あう…」 そりゃ、こんな様子を見てれば、一目瞭然だろう。 そう、確認するようだけど、私は彼が好きだ。 どうしようもないくらい。 何故か、それはわからないけど。 でも、好きになってしまったのは仕方がない。 「やれやれ、あなたもそんな年頃ねぇ」 「はぁ…」 なんと返事をすればいいのかわからないので、適当な生返事だ。 そんな様子を見て、彼女は少し表情を険しくした。 「もう、言ってあるの?」 私も表情が曇る。 「いえ…」 「…言わなくて、いいの?」 少し口ごもる。沈黙の後、私は口を開いた。 「彼に、ショックを受けさせたくないから。 だって、彼、この前両親亡くなったばかりらしいし…」 「そう…」 場の空気が重くなったので、私は少しでも明るくしようと振る舞った。 「でも、ほら、彼、私のこと好きかどうかなんて、わからないし!」 「あら、そうかしら?だって、部屋を出た時の彼、すっごい顔真っ赤だったわよ?」 私の雰囲気を察してか、彼女も明るく言ってくれた。 ホントに、優しい人だ。 「え、いや、その…ホント?」 少し、しどろもどろになりながら、でも内心嬉しかったり。 「ええ。なかなか良い子みたいね〜。一目でわかるわ。名前、なんて言うの?」 「え、神崎、秀人、君…」 少しうつむき加減になる。最後の方は、ホントに小さい声だった。 彼の名前を口にしただけで、これだから。 そんな様子を見て、看護婦さんは、 「重症ね」 ニンマリと笑って、お大事に、と病室を出ていった。 そして、さっき看護婦さんが言ったことを思い出す。 そう、彼をもう傷つかせたくない。 でも、このことを知らなかったら、彼はもっと悲しむだろうか? それを考えると、辛い。 神様、もしもいるのなら、せめて私に誕生日を迎えさせて下さい。 彼と一緒に、誕生日を祝いたい。 「じゃあ、ここを…神崎。答えてみろ」 突然村田先生にさされて、僕はしどろもどろになった。 なんたって、今さっきまで彼女のことを考えていて、授業を全く聞いていなかったからだ。 仕方ないので、僕は正直に、 「わかりません」 と即答した。 先生はやや呆れながら、でも少し同情気味に 「まぁ、最近いろいろあって疲れてるだろうしな…」 先生、ごめんなさい。 確かにいろいろあったことにはあったんですけど。 別のことで僕は頭が一杯だったんです。 そんな感じで、一応心の中で謝っておく。 ホント、申し訳ない気になってくる。 「それじゃ、神宮寺。できるか?」 「…はぁ」 今さっきまで寝てました、というような気の抜けた返事をして、 彼は席を立って黒板の方まで行った。 数秒後、飄々と帰ってきてそのまま座った。 「せ、正解…」 先生も少し呆気にとられていたようだった。 実は、先生も寝ていたことには気付いていたのだ。 なのに、教科書にも出てない問題を、スラスラと解いてしまったのだ、彼は。 さすがの僕も、それが難しいことくらいはわかっていた。 お〜、っと周りから歓声が上がる。 まさしく彼はヒーローである。 「どうしてあんなのわかったの?予習でもしてるの?」 小声で、茫洋としている神宮寺君に尋ねると、 「いや、何。伊達に歳食っちゃいないからな」 飄々と答える。 僕と同い年でしょうが、と突っ込みたくもなるが、彼を見ていると 実際に歳食ってるような気がして、突っ込めなかった。 雰囲気からして、不思議な人だった。 「それよりよ…」 「何?」 彼が顔を寄せてきたので、僕もそれに習う。 「どこまで進んだ?」 「いや、どこまで、って、今君が解いてきた問題のとこまでだよ?」 「そうじゃなくて。彼女と」 「ど、どこまで、って…」 突拍子もなく聞いてくるんだから、いつも僕は困ってばかりだ。 つい、顔が赤くなる。 「そんな、進むも何も、僕らは別に付き合ってるとか、そーいうんじゃ…」 「何言ってんだ。男は度胸だろ? 純情なのもわかるが、急がないと、どこかへ飛んでってしまうかもしれないぜ?」 意味ありげに、彼は言う。 いつも意味不明なことばかり言っているが、その言葉はなんとなく引っかかった。 「飛んでっちゃう、ってどーいうことさ?」 「文字通りだよ。ま、そーならないようにしっかり捕まえておくんだな」 「捕まえとけ、って…」 そう言った瞬間、授業終了を告げる鐘が鳴った。 そのまま、彼は教室を出ていってしまった。 また、タイミングを逃した。 どうして、僕ってこうタイミングが悪いんだろうか? とにかく。 神宮寺君のアドバイスは、聞いておくことにしよう。 少しでも積極的になれるように。 それが僕に出来るかどうかは別としても、努力するだけなら出来るから。 # この後も、そして最後まで。 このタイミングの悪さは、僕について回ることになった。 # 「バイト始めたんだ、僕」 いつもの通り学校の放課後、彼女の病院に寄った僕は、そのことを報告した。 「へぇ、どうして?」 いつものように、穏やかな笑顔を浮かべながら相づちを打つ夏美。 「うん。おじいちゃんたちに頼ってばかりもいられないし、ね。それに…」 「それに?」 「あー、いや、何でもないよ」 君へのプレゼントを、自分で買いたいから。 なんて、言えないよ。 「なぁに?教えて、ね?」 首を横に傾げて甘い声で聞いてくる。 その仕草に、僕は思わずドキ、とする。 いつまでたっても慣れないんだ、これが。 彼女のちょっとした仕草にさえドキドキしてしまう。 思わず言ってしまおうか、そんな考えが頭によぎるが、僕はぐっとこらえる。 「ホント、何でもないんだ」 「ふ〜ん…」 まだ聞きたそうな顔をしている。 そんな顔も、またよかったり。 「ま、まぁいいじゃない。ね?」 全然ごまかせていないけど、僕はそんな感じで話を終わらせた。 まだ納得のいってない顔をしていたので、少し別の方向へと持っていくことにした。 「別のことなら、いいよ?なんでも聞いて?」 「ふぅん、なら、他のことで許してあげようかな。そーねぇ…それじゃ、秀人の夢は?」 「夢?」 「そう。なぁに?」 「夢、かぁ…」 夢。ないことはない。 けど。 少し人に言うのは、何というか、気が引けるというか… 「他のじゃ…」 「ダメ」 言葉を先回りされ、反論できなくなる。 仕方ないな… 「えっと…作家、になりたいんだ、僕」 「作家?」 口にした途端、後悔と不安が広がった。 笑われるかな…? ウソでも、別のことを言っておいた方がよかっただろうか? が、そんな僕の予想とは裏腹に、彼女は、 「すごいじゃない!素晴らしい夢だと思うわ、私!」 と、自分のことのように騒いでくれた。 同時に、言って良かった、と思えた。 彼女が喜んでくれると、それだけで僕も幸せになれる。 「そ、そうかな?」 「そうよ!いいナァ、そんな夢持ってて」 「でも、なれるかどうかもわからないし。それに、なれても売れるかどうか…」 「大丈夫。秀人ならきっと売れるわよ。 素晴らしい作家になれるわよ。私が保証してあげる」 彼女が言うと、本当にそうなれるような気がした。 とても、不思議だった。 「今度、書いた作品持ってきて?読んで、感想言ってあげるから」 それは嬉しい。けど… 「でも、今までに誰にも読んでもらったことないし。自信、ないんだよねぇ…」 そう、誰にも読んでもらったことがない。 いや、読んでもらっても、一体どんな感想が返ってくることか、わかったもんじゃない。 それだけ、僕の周りにはそういう人間がいないのだ。 「ええ、じゃ、それって私が一番の読者ってこと?嬉しいナァ。早く読みたいよ」 夏美は、そう言う意味では、確かに一番読ませやすい、かも。 「なら、今度新しいのが書き上がったら持ってくるよ」 自分の小説を読ませたいなんて、誰にも感じたことなかったけど、 彼女には、ぜひ読んでもらいたいと、そう思った。 「ホントに?じゃ、約束ね」 「ああ、約束」 そう言うと、夏美はまた笑顔になる。 彼女のどの表情も好きだけど、やっぱり、笑顔が一番好きだ。 見ているこっちまで、幸せになれる。 「そう言えば、夏美の夢は?」 本当は、名前で呼ぶのは、まだ少し気が引ける。 なんとなく、恥ずかしいというか。 でも、彼女は僕の名前を自然に呼んでくれている。 なので、僕も名前を呼ぶように努力していた。 これが、僕に出来る最大限の積極的行動。 「私?私の夢、かぁ…」 そう言うと、夏美は一瞬悲しそうな顔をして、窓の外を見つめた。 まるで、窓の外に希望があるのに、そっちに行くことのできない、鳥かごの中のカナリヤのように。 そして、またこちらに向き直る。 寂しそうな笑顔で。 「私の夢は、目の前一杯に広がったヒマワリ畑を見ること。 昔、お母さんと一緒に見た、あの素晴らしい光景を、もう一度…」 そうか、だから、あんな寂しそうな顔を… 聞いて、まずかったかな、と少し反省する。 「ごめんね。なんか、嫌なこと思い出させて…」 「ううん、そんなことないよ。 お母さんとの思い出は、とても大切なモノだから。 嫌なことでもなんでもないの。それより、ね」 「それより?」 「…なんでも、ないわ」 彼女の顔が、曇る。 そんな顔を見ていると、僕まで気が重くなってしまう。 なんか、嫌だ。 「じゃあ、さ。今度、一緒に見に行こうよ!」 少しでも場を明るくしようと、僕は脳天気過ぎるくらい精一杯明るく言った。 「え…?」 「ヒマワリ畑!その、一面に広がったヒマワリを、僕も見たいし。今度、退院したら、その、二人で、さ」 最後の方は、少し声が小さくなった。 ちょっと恥ずかしかった。 彼女の方を見ると、彼女も少し顔を赤らめて、が、嬉しそうに、 「…うん!」 と言ってくれた。 言って良かった。 彼女の嬉しそうな顔を見るのは、やっぱり嬉しい。 「じゃ、約束」 「ええ」 そう言って、指切りをする。 でも、少し不思議だった。 何故、それが夢なんだろう? 母親と見る、なんて不可能なこと夢にするわけないし。 が、僕はそれを口にはしなかった。 # 約束をした、そう、確かに。 でも、それは果たされることはなかった。 何故、気付かなかったのだろう。 何故、口にできなかったのだろう。 なんて間抜けだったんだろう、僕は。 # 「どんな話がいいかなぁ…」 机の前に座り、さて書いてみようか、とは思ってみたものの、ネタが浮かばなかった。 今まで書いていたのでもいいけど、やっぱり、別の、なんというか… 彼女が喜びそうな、そうだなぁ… 「恋愛、とか」 ポツリと呟く。 そして、自分で言ってちょっと顔を赤らめてしまった。 何を言ってるんだ、僕は。 今まで書いたことがないし。 それに、僕自身恋愛ってどんなものか、よくわからない。 よくわからないものを書くのは、やっぱり難しいもので。 でも…今なら。 そう、今なら書けるんじゃないか。 「よし!」 そう声を上げ、気合いを入れると僕はどんな話にするのか考え出した。 この考える時間が好きだ。 ぼーっと、いろいろな話を考える。 大きな流れに乗って、思いつくままに… 思いつかないと大変だけど、でもそんな時間も楽しい。 のんびりと、充実、とまではいかないまでも、こーいう時間は、大切だと思う。 ん〜、やっぱりハッピーエンドが良いよね。 主人公はどんな性格にしようかな? 登場人物は、どんなのがいいかなぁ? そんなふうに、ただボーっと。 と、その時、ピン、とネタが浮かんだ。 主人公とヒロインが、いろいろな困難を経て、それでも二人協力しあって、 最後に約束の場所、ヒマワリ畑で会う… 当然、僕達をイメージしている。 そんなドラマな関係でもないけど。 とりあえず、良いイメージが浮かんだので、僕は書き始めた。 思い浮かんだことは、どんどん書いていく。 一度書き始まると、徹夜してしまうこともしばしば。 それに、今回は早く彼女に読ませたかったので、いつもより熱が入っていた。 結果、カーテンの間から光が射していた。 こんな日が、しばらく続く。 # ゴホゴホ、と咳をする。 最近、日に日に動くのが辛くなってくる。 まるで、おばあさん。 こんなに若いのに。 それでも、彼が来たときは明るく振る舞わなくてはならない。 彼を、少しでも不安にさせたくないから。 それに、彼の顔を見ると、苦しみも和らいだ気がして。 全然辛くなかったから。 私が最近よく考えること。 それは、彼のことばかり。 彼は、私に元気を与えてくれる。 彼は、私に生きる活力を与えてくれる。 じゃあ、私は…? 私は、彼に何を与えているのだろう? 安らぎ? 幸せ? …私には、そんな自信ない。 以前、彼に死んではいけない、と説教じみたことを言ったけれど、 あの時は、彼のそんな顔を見ていたくなかっただけで。 私に、そんなこと言う権利はないのだろう。 だって… でも、彼にこのことを伝えるわけにはいかない。 例え、ウソでも私は彼に安らぎを与えていたいから。 同時に、安らぎを与えられたいから。 生きる力を、与えられたいから。 与える、か。 そう言えば、もうすぐ誕生日だ。 一体、彼は何をくれるのだろう。 そして、私は何を与えるのだろう。 情けないことだが、私はまだこの時点で何を買うのかさえ決めていなかった。 一体、どんな物をあげれば、喜んでくれるだろう。 彼の笑顔を想像するだけで、私の心はウキウキしてくる。 やっぱり私は、彼が好きなようで。 考えるだけで顔が熱くなる。 ホントに、これは重病だ。 一体、どこが好きなのだろうかと、前はよくわからなかったが、 今は、なんとなくわかる。 忙しくても、来てくれる彼。 彼は、いつでも私に安らぎを与えてくれた。 その優しさを、私は好きになったのだろう。 今度、看護婦さんにプレゼントの相談をしよう。 彼の顔に目一杯の笑顔が広がるような、そんな物をプレゼントしたい。 きっと、彼女ならとても素敵な物を提案してくれるに違いない。 そして。 そして、願うなら、その日を彼と迎えられることを。 その日彼に与えるモノが、悲しみでないことを。 # 「あのさ」 あんまり人に相談したくないことを、あんまりそーいうことをしたくない相手に、 僕は話を持ちかけた。 「なんだ?」 その相手、国井達也は、何かを少し期待しているようだった。 何せ、大抵向こうから話しかけてばかりで、こっちから話しかけることはさほど無い。 だからといって仲が悪いわけではないけど。 僕はその期待に応える質問をする。 窓の外を見ながら、 「その、女の子って、どんなのモノをもらえば喜ぶのかなぁ?」 ボソリと僕は呟いた。 そう、夏美へのプレゼント。 そろそろバイトのお金も貯まり、誕生日も近づいたので、 さて何を買おうか、と思ったところで肝心なことを忘れていた。 僕は、女の子がどんなモノを欲しがるのか、全く知らない。 何せ、この年になるまで女の子に興味なんて持たなかったから。 不思議なようだけど、ホントのこと。 実は、今までこーいうことを国井に相談したことはない。 何故って、どうせこいつはこういうことを聞くと、決まって茶化すに決まってるし。 何より、僕に好きな子が今まで出来なかったから、相談する必要もなかった。 とにかく、今まで僕にそんな相談をされたことのない彼は、とても嬉しそうな顔になり、 「おーおー、神崎秀人君もそーいうお年頃ですかぁ?」 やっぱり、相談するんじゃなかった。 僕の頭に少し後悔の念がよぎる。 でも、僕の知り合いの中では一番そーいうことに詳しそうなので。 彼は、自他共に認める惚れっぽい性格で、大の女好きなのだ。 なので、一番頼りになる、かもしれない。 「別に、いいだろ?それに、彼女って、わけでもないんだから…」 最後の方はやっぱり声が小さくなる。 そんな僕の珍しい態度を見て、ますます気をよくしたのか、彼は満面の笑みを浮かべる。 「まーまー、純粋な君なら確かに悩むだろーね。 やっと好きになった女が出来たのだから。 ま、この俺にどーんと任せとけって」 …あんまり、任せたくはない。 でも、他に当てもない。 仕方がないので、とりあえず聞くだけでも。 「それで、どんなのが、いいのかなぁ?」 「そーだなぁ、やっぱり女ってのはおしゃれするのが好きだからな。 服とか、アクセサリーとか、あ、あと香水なんてのもいいかもな」 「そういうの欲しがるモノなの?」 高いモノを欲しがるんだナァ、と僕は感心しつつも呆れてしまう。 もし、夏美もそういうのが欲しいのだったら、結構な出費だ。 「まぁ、な。でも、一番はやっぱり相手が一番欲しいモノだろうよ」 一番欲しいモノ…? 何だろう、と考えたところで、僕はふと思い出した。 「あー、なるほど。ありがと、随分ためになったよ」 「おー。これからも、じゃんじゃん相談してくれよ♪」 もうしないと思うよ、と心の中で呟きつつ、僕は少しウキウキしながら国井の教室を後にした。 きっと、彼女は喜んでくれる。 そう思うと、もう嬉しくて仕方がなかった。 # 「ありがとうございましたー」 僕は綺麗に包装されたモノと、原稿用紙の束を持って、その店を後にした。 今日は、7月7日。 織り姫と彦星が会う、七夕の日。 同時に、僕と夏美の誕生日でもある。 国井のアドバイスを元に、彼女が喜びそうな、ヒマワリの柄のワンピース、 それとついに完成した小説を彼女にプレゼントする予定である。 この小説は今までで一番の自信作である。 きっと、彼女のお陰だ。 一体、どんな顔をして喜んでくれるだろうか? その笑顔を想像するが、やはり現実で見るのが一番だろう。 思わず、顔に笑みが浮かぶ。 早く、彼女の喜ぶ姿が見たいな。 このワンピース、きっと似合うだろうな。 小説は、どんな感想をくれるだろうか? おもしろいと言ってくれるかな? つまらなくても、きっと彼女はそう言ってくれるだろう。 早く会いたい、そう思っていた時だった。 僕の携帯がなった。 それは、緊急のシグナルのように。 その時の僕は、夏美からかな、なんて呑気に考えていた。 「もしもし」 「あ、えーと、神崎秀人君よね?」 「ええ、そうですけど…」 電話の相手は、せっぱ詰まった様子で、僕の名前を尋ねてきた。 どうしたんだろう。誰だろう、この人。 平和ボケした頭に、至極当然の疑問がよぎる。 そんな僕にお構いなしに、彼女は僕と確認した瞬間に、早口で言葉を続けた。 「お願い!早く、病院に来て!」 「え、どういうこと…」 何故だか、胸騒ぎがした。 病院? それは、彼女が入院しているとこのことだろうか? 考えている間にも、彼女は口調を早めていく。 「いきなりでごめんなさい。 私、大山夏美さんの看護婦なんだけど、実は、昨日から彼女の容態が急変して…」 「え?な、なに言ってるんですか?」 彼女の名前が出てきた。 それが、僕の胸騒ぎをより確実なモノへと変えた。 彼女に最後に会ったのは、二日前だった。 とても元気な笑顔で、またね、と確かに言っていた。 「ゴメン。実は、口止めされていたのよ、夏美さんに。 でも、やっぱり言わなきゃいけないと思って…」 看護婦さんの口調は、冷静になろうと押さえながら喋っていることがよくわかった。 嘘は、言っていないことがハッキリとわかる。 「何を、ですか?」 声が震えているのがわかる。 不安が、嫌な予感が止まらない。 「彼女の、本当の病気。彼女は、あなたに心配かけまいとウソついてたみたいだけど。 実は・・・彼女は、悪質なガンで・・・あなたと会った日から、あと3ヶ月ほどしか生きられない体だったの…」 「!」 思わず、携帯を落としそうになった。 ガン?彼女が? 嘘だろう? だって、彼女はもう少しで退院できるって。 僕の脳裏に、彼女と会ったときのことがフラッシュバックされる。 「そーいえば」 僕はそんな感じで話を切りだした。 外は梅雨にふさわしい雨で。 じとじとしていたが、僕は彼女といられたので、全然不快にならなかった。 「何?」 キョトンとした感じで聞いてくる彼女は、やっぱり可愛い。 「今まで知らなかったけど…夏美は、なんで入院してるの?」 そう、会って2ヶ月も経っているというのに、僕はそれまでの日々が楽しすぎて、 肝心のことをずっと聞き忘れていたのだ。 とんでもなく間抜けな話である。 そう尋ねられた彼女は、一瞬顔を曇らせたに思えた。 が、それは一瞬で、気のせいだったように思わせるような笑顔で、 「私、昔からあんまり体強くなくてさぁ。いろいろと病気にかかっちゃって。 でも、大丈夫。すぐに退院できるから」 「そっか」 「うん、それに、約束だってあるでしょ?」 約束、という単語を聞くだけで何なのかすぐにわかる。 それは、一緒にヒマワリ畑を見ること。 彼女が母親と一緒に見たような、目の前一面に広がったヒマワリ畑を。 「そうだね」 「うん」 ちょっと間をおいて、 「夏美」 「うん?」 「その…頑張ってね」 一瞬ためらったように見えたが、彼女はやはり笑顔で、 「…うん!」 そう言った。 雨さえも吹き飛んでしまうぐらいの笑顔だった。 それじゃ、あの時、彼女は嘘をついてまで…? 僕に、心配をかけさせないために… あの時一瞬だけ見せた表情は、気のせいじゃなかった…? なんで、僕はあの時気が付かなかった? なんて…僕は間抜けだったんだ。 彼女が、どれだけ苦しい中であの笑顔を振りまいていることにも気が付かないで…! 自分に、腹が立った。 なんて、馬鹿なんだ。 彼女の笑顔に、僕は安心しきっていた。 くそっ、くそ…! 思わず、携帯を握りしめる力が強くなる。 ひびが入ってしまうのではないかというぐらい。 「もしもし、もしもし!?」 看護婦さんの声に、はっと我に返る。 「あ、すいません…」 「とにかく、急いで来てちょうだい。お願い…!」 看護婦さんはよっぽど辛いのだろう。 あんなに良い子が、死んでしまうのだ。 せめて、最後だけは… そういう気持ちなのだろう。 「わかりました。出来るだけ、急ぎます」 そう、力強く言って、電話を切る。 とにかく、止まっているわけにはいかない。 急がなくては…! ここからなら、車を使うより走った方がいい。 そう判断した僕は、全力で走り出した。 最近は、力仕事系のバイトで鍛えているつもりだったが、 夜まで働いていたのと、終わってから小説を一気に書き上げたのがちょうど昨日だったので、 とても寝不足で体力がなかった。 でも、走らなくては! と、その時だった。 ドン、と誰かと肩がぶつかる。 「すいま…」 謝ろうとして、途中で止まる。 相手は、あの竹村だったからだ。 しかも、周りには仲間が何人もいる。 何で、こんな時に、こんな奴と会うんだ、僕は。 「いってえな!」 悪意に満ちた眼差しで睨み付けてくる。 「ゴメン、急いでいたんだ。それじゃ…」 そう言って、立ち去ろうとした瞬間だった。 目の前に、竹村の下っ端どもが立ちはだかる。 「おいおい、ぶつかっといてそれだけぇ?」 「随分となめてるなぁ」 くそ、なんだってこいつらはこうも馬鹿みたいに人の邪魔ばかり…! 「だ、だからゴメン、って…」 「うん、お前…」 こちらを見ていた竹村が、何かに気付いたように呟く。 「確か、神宮寺といつも一緒にいる、そう、神崎秀人、だったよな?」 なんだって名前を覚えられているんだ、僕は。 確かに中学が一緒だったけど、全然話したことだってないのに… そっか、神宮寺君といつも学校で話しているからか。 彼は、確かに変なことを言ったりするが、根はいい人だった。 だが、もちろんそれは彼らにとっては違う。 憎むべき相手でしかない。 しかも、それの友達と来れば… 「ちょうどいいや。毎度毎度あいつには頭来てるんだ。てめぇで憂さ晴らしさせてもらうとするか」 こうなる。 まったく、本当に何も考えていないのか、こいつらは。 たとえここで僕を叩きのめしたとしても、何の意味もないというのに。 当然それは僕にとってはまったくのとばっちりである。 そんなのに構ってたら、間に合わないに決まってる。 本当に、何というタイミングの悪さだろう。 呆れを通り越して、自分自身に感心してしまった。 「悪いんだけど、ホントに急いでいるんだ!通してくれ! 殴りたければ、後でいくらでも殴って構わないから!だから、今だけは!」 慌てている僕を見て、竹田は顔を愉快そうに歪める。 「あ?何か言ったか? あいつと関わるようになってから、だいぶ耳が遠くなっちまってよ。 俺には今好きなだけ構って下さいとしか聞こえないんだけど?」 裏で、下っ端どもが笑っている。 こうしている間にも、彼女は死にかけているというのに…! その時、僕の中で何かが弾けた。 「…けよ」 小さく、呟く。聞き取れないほどの声で。 「ああ?何だって?」 「どけって言ったんだ、馬鹿野郎!」 そう言って、僕は目の前でニヤニヤ笑っている竹村を全力で殴った。 竹村の不快な顔が一瞬歪み、そして不様に吹き飛んだ。 さすがに力仕事をしているだけあり、昔以上の筋肉が付いていて思った以上のダメージを与えた。 僕は、ここで立ち止まっているわけにはいかない。 こんな奴らの相手をしている場合じゃないんだ。 早く、早く彼女に会わなくちゃ…! 今度こそ、間に合えるように! が、今この状況で冷静さを失ったこの行動は、返って僕を困らせることとなった。 当然、彼らの怒りを買ったわけで。 「この野郎!」 横に立っていた一人に脇腹を蹴られる。 「がっ!」 思わず声が出る。 続けざまに、後ろから蹴り飛ばされる。 「あうっ!」 そのまま地面に倒れ込んだ。 いくら力仕事をしていても、僕は喧嘩が強くなったわけじゃない。 しかも、相手は一人一人が喧嘩慣れしていて、なおかつそれが何人もいる。 負けるのは目に見えている。 でも、それでも… こんな奴らに屈したくはなかった。 こんな、人の不幸を楽しんでいるような奴らのために、僕は止まっているわけにはいかないから。 が、周りを囲まれ、集団で蹴りを加えられ、もはや絶体絶命というやつである。 最悪だ… 「いってえなぁ、このクソガキ!…ん、何だ、この包みは?」 と、その時竹村が、僕が落としたプレゼントを拾い上げる。 「や、やめろ、それを返してくれ!」 慌てふためく僕を見ると、愉快そうな顔になり、 「こりゃいいや。何か知らないけど、大事なモノらしいな。 俺はな、あいつの知り合いってだけでむかつくんだ。てめぇも運が悪いな。 恨むんなら、あの変人を恨みな!」 そう言って、包みを引き裂こうと、竹村が腕に力を入れた。 「やめろーーー!!」 悔しくて、仕方がなかった。 こんな奴に屈するのが。負けてしまうのが。 情けなかった。 こんな時に限って、ヒーローは現れるモノである。 「おいおい、多人数でよってたかってっつーのは、随分と卑怯じゃないのか?」 声のした方に、一人の少年が立っていた。 いつも意味不明なことをいうが、とてもいい人で、喧嘩が何故か強い、その人物は… 「神宮寺君…」 そう、神宮寺君だった。 僕を囲っていた奴らも、みんなそろってそっちを見る。 恨みの元凶である彼を。 その視線をまったく気にしないで、彼は僕に、 「急げ。もう、時間がないぞ」 と、何もかも承知したような顔で言った。 普通の人なら、誰もが意味を理解できないであろうその言葉は、 いつものことで慣れている僕には理解できた。 彼は、知っている。何故かは知らないが。 不思議な彼なら、きっとどんなこともわかってしまうんだろう。 根拠はなくとも、そう確信できた。 「ありがとう!」 そう言って、立ち上がりざま僕は竹村の手から包みを奪い、 原稿用紙の束を拾うと、一目散にそこから退散する。 「あ、待て!」 追いかけようとした一人に、彼はごく自然な動作で足払いをかけ、そのまま振り回す。 吹き飛んだ不良は、一発でのびていた。 いつ見ても、鮮やかな手際である。 「ほれ、急げって」 何事もなかったかのように、彼は僕にウィンクをして、軽く言った。 「う、うん!」 ありがとう、ともう一度心の中で呟いて、僕はその場を後にする。 「行ったか…」 間に合えよ、と少年は心の中で今見送った友人に呟く。 もっとも少年、とは外見だけの問題で、実際には彼は見た目以上の年月を生きている。 少年には、もう時間がないことはわかっているが、それでも、間に合うと信じるしかなかった。 「てめぇ、神宮寺…」 先程その少年の友人に絡んでいた奴らのリーダー格、竹村という人間が少年を睨み付けていた。 その視線を軽くあしらい、鼻で笑うと、少年は皮肉めいて、 「なんだ、何か文句あるのか?群れなきゃ何もできない臆病者どもが」 挑発する。 それは、当然、相手の逆鱗に触れた。 が、少年はいたって冷静である。 いや、冷静すぎる。 恐怖という感情を全く感じないその顔に浮かぶのは、冷たすぎるほどの笑みだった。 余裕。 周囲から見れば、気が狂ったと思うだろう。 だが、それは虚勢でもなんでもない。 彼は、この人数が相手でもまだ足りないのだ。 それを見て、不良達は一瞬たじろぐ。 忘れていた本能が伝えているのだろう。 自分より強い者には逆らってはいけない、と。 「お前らもこりねえな。馬鹿の一つ覚えみたいに」 「うるせぇ!」 その強がりが、彼らに出来る精一杯の反抗だろう。 恐怖が、不良達の脳をむしばんでいく。 「お前ら、俺が誰だかわかっていないだろう」 少年は、余裕の表情で相手を見下しながら、一歩進む。 「誰って…神宮寺弘樹、そうだろ!違うっつーのか!」 それに合わせて、不良達も一歩下がりながら叫ぶ。 完全に声が震えている。 自分達の方が圧倒的に人数は多いというのに、それでも力の差は歴然なのだ。 神宮寺弘樹、と呼ばれた少年は、その問いに対して、笑みを消さぬまま答える。 「ふむ。そうとも言える。だが、違うな。俺は、神の使いさ。 お前らみたいな奴らに、天罰を下す、な」 そして、笑みを消す。 「悔い改めるんだな」 そこから不良達の記憶は、ない。 「はぁ、はぁ、はぁ…!」 心臓が痛い… 足が重い… 息がうるさい… ズキッ、と脇腹が痛む。 …折れたか、ヒビでもはいったか。 情けない。まったく、普段から鍛えていれば… あれから、神宮寺君はどうなっただろう。 いや、きっと彼なら大丈夫だろう。 そんな気がする。 根拠はなくとも確信がある。 それよりも、僕は走らなくちゃ。 苦しい… 辛い… でも、こんな苦しみ、君が今までに味わったことに比べれば、なんてことはない。 君が僕に笑顔を振りまいてくれていたその努力に比べれば。 それに… それに、まだ終わっていないから。 まだ、まだ終わっていないし、何より始まってもいない! 僕は君に言いたいことがあるんだ! 学校の話?違う。 友達の話?それも、違う。 …家族の話?違う、そんな辛い話じゃなくて。 伝えたいこと、何よりも大事で、大切で、でも、話すには少し勇気が必要で− それは。 君が、好きだってこと。 まだ、まだ言えていないから。 だから、待ってくれ! 死なないでくれ! 僕は、僕はまた大切な人を失いたくない! 大切な人に何の感謝の言葉すら言えなかった、そんな後悔したくないんだ! だから… せめて、この思いだけでも、僕は伝えたいから。 伝えられないでお別れなんて、絶対に嫌だから! ≪ - ≫ !-この小説は小説検索エンジン"楽園"に登録されてます-! ∠long ∠index |