エピローグ -



太陽が真上に昇る頃、砂浜に1つの人影が歩いてきた。

そこには、ぼろぼろになった白骨を抱いて、死んだように眠る青年の姿があった。


「また、駄目だったか…」


無精髭を撫で、その人影はぽつりと漏らす。

何度も何度も、繰り返していた。

彼がやって来た時には、既に手遅れだった。

小さな村で広まった伝染病は、町では既に治るものであった。

けれど、この村には、その対処法がなかった。

そして、たまたまその病に耐性を持っていたのが、青年だけであった。

ただ、それだけの話だった。

目覚めた彼は、記憶を失っていた。

いや、失っているフリをしていた。

そして自分は、ただそれに付き合った。

始めは、ゆっくりと元気になっていく彼を見て、この環境がいいのだと思い。

それはいずれ、ただの願いになっていった。

いつか帰ってくるのだと信じて。

ただ、付き合い続けていた。

自分以外誰も見ることのない、道化芝居を、ひたすらに見続けて。

滑稽だと、笑うこともできず、愚かだと、嘲ることもできない、芝居だった。

医者は、眠る青年を抱き上げ、ついでに、足元に落ちていた首飾りを拾った。

この首飾りも、またあの行商人に返ねばならない。

明日目覚めたら、もしかしたら今度こそ戻ってくるかもしれない。

何度も裏切られてきた期待を、また胸に秘めつつ、医者は帰途についた。




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