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目を覚ますと、視界には薄汚れた天井が広がっていた。

体の上に薄い掛け布団がかけられていたこと、

また、体が仰向けであったことから、

自分が今まで眠っていたことを知った。

周りの様子を見ようと起き上がると、視界の端に、白衣を着た男の姿が見えた。


「あぁ、気付いたのかい?」


無精髭をたくわえた、木こりのような中年の男性。

白衣を着ていなければ、その印象のお陰で間違いなく木こりだと思っていたであろう、

その男性は、人懐っこい笑みを浮かべてこちらにやってきた。


「…ここは?」


私は、自分が今いる場所がどこなのか分からず、その答えを彼に尋ねた。

尋ねた後で気付いた。

そもそも私が、何も覚えていないことを。


「ここは…街外れの寂れた村だよ」


どこか焦点をずらされた答えであったような気がしたが、

とりあえず人里ではあるらしい。


「私は、どうしてここに?」


白衣を着た男は、無精髭を、ぞり、と撫でながら、説明してくれた。


「どうもこの村の近くに倒れていたらしくてね。

それを村人が発見して、ここまで運んでくれた。

後で礼を言うといい」


「…そうですか」


「行き倒れなんて珍しいな。どこに行こうとしていたんだい?」


「…わかりません」


「…ふむ?」


訳知り顔、と言ったような表情を浮かべる男性を尻目に、

私は首を動かし、周囲の様子を見る。

先程まで男性が座っていた机の隣に古びた窓があり、

そちらから村の様子を窺うことができた。

本当に小さな農村の様で、活気がない。

畑もあるにはあるが、何となく荒れているように見える。

ふと、どこかで見たことがあるような風景のような気がした。

何の記憶もないのに、不思議だった。

もしかしたら、似たような風景を、かつてどこかで見たのかもしれない。


「何も覚えていないのかい?」


しばらくの沈黙の後、男性が声をかけてきた。


「…そうみたいです」


「自分の名前も?」


「…えぇ」


言葉は喋れるのに、記憶がない、という事態に、

自分のことながら変な話だな、と、何の感慨もなく思った。


「そうか。ならばしばらくこの村でゆっくりしていくといい。

今は弱っているし、それに、その内記憶を取り戻すかもしれない」


「…ありがとうございます」


随分と優しい人だ、と、やはり感慨なく思った。

その後、しばらく雑談をした後、私は再び眠りについた。

そうして、初日は終わった。





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