どこまでも続く空の間で #9 -


翌日。
俺は目覚ましと同時に起床し、手早く支度を済ませた。
こんなにしっかりと目覚めたのは久しぶりだ。
今日は雨でも降るかも知れないなどとぼんやり考えつつ、
俺は元気になったエアバイクに跨った。

「今日も1日頼みますよ、っと。相棒」

主の機嫌がいいからだろうか、相棒はいつもより気合の入ったエンジン音を聞かせる。
ふふ、かわいーやつめ。今日は頑張ってもらうぞっと。
アクセルを一気に全開にすると、俺は無駄な寄り道をせず、一直線にキール宅へと向かった。

「っはよーっす」

事務所の扉を開けると、新聞を覗きつつタバコを吸っていたキールが、
珍獣でも見るような目つきでこちらを見た。
…そんなに俺の早起きは珍しいか。
自分でも驚いたけれど。

「おう、早いな…珍しい」

「たまにゃそんな日があっていーだろ?」

「あぁ、いーんだが…まだ始業時間じゃないんだが」

「はぁ?何言ってんだ、別に早く始まる分にはかまわねーだろ。
とっととかたづけちまおーぜ」

いつも以上にやる気の見せる俺を、キールが怪訝な目で見つめる。
うーん、しまった。不自然な行動として明らか過ぎる。
またロストに行くんじゃないかという疑いを持たせてしまっただろうか?
今更自分の失態に気付いて内心うろたえたが、キールはただ、

「…そうだな、雨降るかもしれんし」

…結果オーライだが、どうにも腑に落ちないのは何故なのか。




今日の荷物は少なかった。ラッキーだ。
これなら昨日のように慌しくロストから戻らなくて済む。
いつもならエアバイクと戯れつつ過ごす配達時間を最短に縮め、
俺はあっという間に仕事を終わらせた。
お得意さんも、いつもより早い俺の到着に驚いていた。
それから、今日は洗濯はやめておいた方がいいか悩んでいた。
…おのれ、どいつもこいつも。
だが俺は気にしない。そう、そんなことよりも大事なことがあるのだから。
時間を確認。よし、全然余裕。
本当なら広間で遊ぶ子供達に挨拶するのだが、そんなことをしている余裕はない。
俺は昨日のサケメまで一直線に飛んでいき、
そしてそのまま、迷うことなく落ちていく。
整備したてのエアバイクが、高度急激低下によるエマージェンシーを告げている。
構うものか、と俺は更にアクセルを深く入れた。
スピードメーターが今まで見たこともない数値を叩き出す。
昨日の自己最高記録が目じゃない速度。
だが、整備したばっかりのエアバイクと、
それとこの俺の腕前さえあれば、何の問題もない。
ギリギリまで飛ばして行ってやる。
少しでも早く辿り着くように。
しかしその考えは、直後、間違っていたことに気付く。

気圧の急激過ぎる変化に、人体が耐えられないじゃないか。

そのコトに気付いたのは、俺が昨日のようにゴミ山に突っ込んで意識を取り戻してからだった。






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