サクラと桜。 -



舞い散る桜。

それを見て、ヤマザキシゲルは思う。

花は必ず散っていくものだ、と。

その中でも特に桜は、儚く散っていく。

どうして、いつまでも咲いていられないのか。

そんなことを、花は思うのだろうか。

咲いていられないから、あんなに一生懸命咲き誇るのか。

少しの間だけでもせめて、と。

それは、まるで―――



「…なーんてことをな、思ったりしたワケ」


場所はいつもの屋上、ではなく、そこから見下ろせる、校庭。

現在そこでは、植えられた桜が、満開、まではいかないまでも、

八分咲きくらいには咲いていた。

ヤマザキシゲルはいつもの様に紙パックの飲み物をベコベコにしつつ、

感傷めいた気持ちを、口にしていた。

ちなみに、今日の飲み物は新製品のイチゴオレ。

試しに飲んでみたが、コレは甘すぎる。NG。


「ふーん」


シバサキサクラは、どうでもいい、と言ったような生返事を返す。

決して話を聞いてない、というワケではない。

話に興味がないワケでもない。

ただ、桜を見上げていたから、適当な相槌をしているだけで。


(いやそれって話聞いてないんじゃないのか?)


そんなヤマザキシゲルの心のツッコミは聞かなかったことにして。

シバサキサクラは、見上げる。咲き誇る桜を。

儚く散り行く様を。

目に焼き付ける様に。

風が、吹いた。

その風に乗って、桜が舞い散る。

儚く飛んで、落ちて、そして汚れていく。

落ちて汚れた花弁に、人は興味を持たない。

排水溝に詰まったりして、邪魔だとすら思うだろう。

けれど、落ちて汚れていく様すら、儚くて。


(何でこんなに感傷的な気持ちにさせるんだろうなぁ…)


視線を、足元に散らばった花弁から、隣でぼーっと空を見上げている女子へと移す。


(同じ名前を持つこの女とは大違い…だよなぁ)


名は体を現す、って誰の言葉だか知らないけれど。

そいつは嘘だろうよ、と、彼は思った。

儚くも何ともないし。

と、時間が止まったかの様にフリーズしていたシバサキサクラの表情に、

動きが戻ってきた。


「あぁ、やっぱりいいねぇ、桜って」


無表情のまま、そんなコトを口にする。


「お前にも情緒なんて言葉があったんだなぁ」


割と失礼なことをさらっと口にするが、彼女は気に留めない。


「いいよね、この、やってやるぜコンチクショウ!って感じが」


「…は?」


何言ってるんだこの女は、と、呆気に取られ、思わず口元の紙パックを落としそうになる。


「いやだから、この全力投球なトコロが」


「…桜ってそんな男らしい花だったっけか?もっと儚いものだろうよ?」


落ちかけた紙パックを手でキャッチし、再び口元に戻しつつ、ヤマザキシゲルは尋ねる。


「うーん、そう言う人多いけどさぁ、桜はそんなコト思ってないかも知れないじゃん」


「…ってーと?」


「いよーし、暖かくなってきたぜ!コイツは咲かずにはいられねぇ!

俺はどかんと一花咲かせてやるんだよー!後始末なんてしったこっちゃねぇ!みたいな」


「…イメージじゃねぇよ」


「そうかなぁ?葉っぱよりも先に咲いちゃう辺りに、せっかちさが感じられるんだけどなぁ。

何ていうか、まるで、そう、花火の様な感じ」


言われて、ハッとなる。

それって、この前俺が考えた結論と一緒だなぁ、と。

まるで、花火の様に。

たどり着くまでの過程はだいぶ違うけれど。

いまだにうーんと悩んでいるシバサキサクラを見て、


(あー…言われて見ると、確かにコイツの言ってるコトも合ってる様な…)


ぼんやりと思ってしまうヤマザキシゲル。


(ていうか、そのイメージって)


まんまお前じゃん、とは、口には出さない。

名は体を現すと言うが。

この場合、どうなんだろうなぁ。

名を体現しちゃってる、と言うか。


「…まぁ、何にせよ、いいもんだ、サクラは」


「うん、そうだよね」


どう捉えるかは人それぞれ、と、自己完結。

でもきっと、今の言葉の真意はきっと本人には伝わらないけど。



…あ、ちなみに進級とかそういう話は彼らにはないんで、と。







                   - 了




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