犬 -
さじき様より頂きました


犬がいた


野良犬だった


そいつはオレの帰り道にいて


オレにメシをねだってきた


オレは逃げた


何故かは知らないけど


全力で走った


ふと後ろを振り返る


いた


どうやら追い駆けられていたらしい


オレはまた走った


また振り返ってみる


またいた


そういえば


昼飯のパンが残っていたな


オレは立ち止まり


カバンの中からパンを取り出し


そいつに半分分けてやった


半分はオレが食った


犬はまだ欲しがる


強欲なヤツめ


もう何もねぇよ


オレは身振りで表し


犬もそれを理解したらしい


とぼとぼと


向こうに歩き去っていった







次の日


そいつは死んでいた


車に轢かれたらしい


口はだらしなく開き


腹が裂け


はみ出た内蔵が


てらてらと鈍く光っていた


虚ろなその目に光はなく


あたり一面に広がった血だけが


唯一


そいつが生きていた証だった


悲しみはない


ただ


虚ろなその目が何か語り掛けてくるようで


オレはそいつから目が離せなかった







墓を掘った


土を盛って


ただ上に石を置いただけの


ちっぽけな墓


こいつは何も知らない


今日死ぬことも


今日死んだことさえも


こいつが今日まで生きてきた証は


夜の雨に流されて


明日になればきれいに消えてしまうだろう


こいつが生きていたという事実も


暗闇という名の雨に流されて


いつかは忘れ去られてしまうだろう


墓を見つめながら


オレは自嘲した






−オレもいつか、こんなふうに死ぬんだ−










∠gift  ∠index