車は進む、とろとろと。 -


「進まないね」


運転席の友人がハンドルにもたれかかれながら呟く。

もう何度聞いたかわからない台詞だった。


「仕方ないだろ、そんな日もあるさ」


ちょっと進んでは止まる。

赤信号が連続で待ち受ける。

もう何分の遅刻になっているだろう。

待っている連中には申し訳ないが、もう少し待ってもらおう。

連絡をしようと思って携帯を開くと、電池が切れていた。

まぁいいか。連絡をしたところで車が進むわけでもない。


「そういえば」


会話が途切れてから数分程して、友人が口を開いた。


「何」


信号はまたも赤。進みやしない。


「あいつらってどうなってんのかな」


ちょろちょろとアクセルを踏み踏み、そんなことを言う。

あいつら?


「あいつらってどいつらよ」


「ほら、あいつらって言ったらあいつらでしょ」


いや。だから。


「あぁ、うん」


面倒なので、大方の予想をつけることにする。

多分合っているはずだ。

友人が言っていると思われる人物達を思い浮かべ、適当な相槌を打つ。

個人的には合っていない方がありがたい。


「付き合ったりしてるのかな」


「さぁ、どうかね」


「そうは見えない?」


「あんまり意識して見てないし」


というより、誰のことだかまだ分かっていない。

いや、分かっている。

けれどできれば分かりたくない。


「まぁ、お似合いっていうか、一緒にいるのが基本って感じだし、付き合うのが自然だと思うんだけど」


「そう」


「よく二人で遊んでるみたいだし」


「ふーん」


「もう実は結構進んじゃってたりして」


「まぁ、変に邪推するのもよくないんじゃないか、その内本人達が何かしら言うだろ」


会話がつまらない、と言った感じの投げやりな口調で言うと、

俺はシートを少し倒してそのまま目を瞑った。

苛立った様子を感じ取ってくれたのか、友人はそれきり口を開かなくなった。

そうさ、本人達が言うまでは。

事実かどうかなど分かりはしない。

分からなければいい。

知らなければ、それは現実じゃあない。


「進まないね」


「仕方ないだろ、そんな日もあるさ」


ちょっと進んでは止まる。

赤信号が連続で待ち受ける。

それでも車は進む、とろとろと。



                   - 了


あとがき -

気分で書いてみた作品。

08/01/24


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