|
幸福者には死を! - むかしむかしあるところに、厳格な王様がいました。
王様は人々の為を思い、たくさんの法律を作りました。 中にはむちゃくちゃな法律もありましたが、国民はみな王様を信じて従っておりました。 ある日のことです。 王様は新しい法律を作ることにしました。 「幸せな国民には死んでもらおう!」 曰く、幸せな人間がいる為に、不幸な人間にまで幸せが回らないではないか、 幸せな人間がいなくなることで、不幸な人間にも幸せな回りやすくなるであろう、 それに、幸せなまま死ねるならその後そのものが不幸になることもない。 大臣は慌てましたが、しかし王様には逆らえません。 国民達は何も知らせられないまま、お城の広場へと呼び集められました。 国民は一人一人王様と謁見をさせられます。 若者がやってきました。 王様は問います。 「お前は今幸せか?」 若者は答えます。 「はい、幸せです」 「何故幸せなのだ?」 王様が更に問いかけると、若者は笑顔で答えました。 「はい、実は今度二人目の子供が生まれます」 「なるほど」 王様はその若者の頭を鉄砲でずどんと撃ち抜きました。 農夫がやってきました。 王様は問います。 「お前は今幸せか?」 農夫は答えます。 「いいえ不幸です」 「何故不幸なのだ?」 王様が更に問いかけると、農夫はため息をついて答えました。 「ちっとも作物が実りません」 「なるほど」 王様は幾らかの種もみを渡し、農夫を帰しました。 老人がやってきました。 王様は問います。 「お前は今幸せか?」 老人は答えます。 「幸せでもあり、不幸でもあります」 「それは何故なのだ?」 王様が更に問いかけると、老人は少し考え、答えました。 「妻に先日先立たれました。それが不幸です」 「では幸せは?」 「妻の世話をする必要がなくなりました。それが幸せです」 「なるほど」 王様は少し考えた後、老人の頭をずどんと撃ち抜きました。 謁見は続きます。 明らかに幸せなものには鉄砲を、 不幸なものにはその力になれそうなものを渡していきます。 どちらでもないようなものは、ほとんどの場合は鉄砲を与えました。 ずどん。ずどん。 謁見はどんどん進みます。 日が暮れかけた頃、とうとう最後の一人になりました。 最後の一人はまだ幼い少女でした。 王様は問います。 「お前は今幸せか?」 少女は答えます。 「はい、幸せです」 「何故幸せなのだ?」 王様が更に問いかけると、少女は笑って答えました。 「今度弟が生まれるからです」 「なるほど」 王様は鉄砲をかまえることはしませんでした。 少女は笑いながら帰って行きました。 全ての謁見を終え、大臣が王様に話しかけます。 「王様、お疲れ様でした。気分はいかがですか?」 「そうだな」 王様は大臣に満面の笑みを見せると、鉄砲を持ち直しました。 ずどん。 最後にも一つ、王様は引き金を引きました。 - 了 あとがき - 幸せなヤツなんて死んじゃえーとか、 そんな口癖な時期がありました。 その口癖から生まれた作品。 08/01/24 ∠short ∠index |