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筒 - あるところに、一本の筒が立っていました。
その筒は透明で硬い材質の何かで作られており、 人が十人は余裕で入れそうな太さで、 何より、とてもとても長い筒でした。 地面に突き刺さり、雲の向こうのそのまた向こうまで伸びて、 なおその先端が見えません。 何の為にその筒があるのか、その地に暮らす人々は知りませんでしたが、 触らぬ神にたたり無しと、誰も近寄らずに過ごしていました。 ある日、その筒に興味を持った若者が、 周りの人間が止めるのも聞かず、筒を一人で調べ始めました。 その結果、筒の中には台座のようなものが設置されているものの、 中に入る入り口は見当たらず、代わりにボタンのようなものがあることを発見しました。 ボタンを押してみると、今までうんともすんとも言わなかった筒が 唸り声のような音を上げ、ぱかりと口を開きました。 若者が恐る恐るその口の中に入ってみると、突然筒は口を閉じてしまい、 若者は中に閉じ込められてしまいました。 若者は混乱しましたが、筒の中にも同じようなボタンがあるのを見つけ、 試しに押してみることにしました。 すると筒は再び唸り声を上げ、 今度は若者の足元にあった台座が凄い速度で浮き上がっていきます。 突然のことに驚く若者。 見る見る内に遠ざかっていく大地を見下ろしながら、 「やはり皆の言う通り触れてはならなかったのだ」と後悔しました。 しかし若者が途方に暮れる必要はありませんでした。 というのも、台座が動いていたのはほんのわずかの間で、 チン、と奇妙な音がしたかと思うと、台座が突如動くのを止め、 筒が再び口を開いたのです。 これを逃したらもう出られないかも知れぬとばかりに、 慌てて筒から飛び出した若者の目に入ったのは、 今まで見たこともないような不思議な光景でした。 美味しそうな果実が生い茂る木々が立ち並び、 小鳥がさえずり、太陽の光がさんさんと降り注いでいる、 まるで絵画のような光景。 荒廃した大地で貧しい暮らししか知らなかった若者にとって、 その場所は正に楽園と言えました。 「まさか筒の先にはこんな場所があったとは。今すぐ戻って皆に教えよう」 若者は再び筒の中に入り、先程と同じ要領で台座を動かし、地上へと向かいました。 一方その頃、地上では大変な騒ぎになっていました。 若者が筒に食われて空に上っていってしまった。 きっとこれは近づく人間を食べてしまう筒なのだ。 人間達は怯え、話し合います。 「こんなものがあってはまた誰かが食われてしまう」 人間達は、皆で協力し、その筒を叩き折ることを決めました。 筒はとても硬くてなかなか折れませんでしたが、 皆が力を合わせて叩く内、段々とひびが入り始め、 更に叩くと見事筒はめりめりと音を立て、大地を横断して崩れていきました。 「これでもう恐れる必要はない」 人間達はほっと一安心し、それぞれの生活へと戻っていきました。 - 了 あとがき - 久しぶりに更新。 つってもまたしてもサークル内で書いたものですが。 まぁせっかく書いたんだし…ねぇ? ちなみに今回のお題は「エレベーター」「ですます調」でした。 結果、こんな感じの話に。 書きあがって思ったのは、「星新一みたいだなぁ」とか。 うーん、変な話を書こうと思ったらこうなってしまった… ま、そんな感じで。 06/10/26 ∠short ∠index |