大学生活一ヶ月目の夜も更けていく -


部屋は暗く、静寂に満ちていた。

人影は、二つある。

俺と、彼女だ。

だが、彼女はぴくりとも動かない。そして、俺も動けなくなっていた。

やってしまった。

冷静になった頭の中に、ただその言葉だけが繰り返される。

美しい人だった。

今時の女性と違い、派手な化粧はしない人だった。

よく手入れのされた長い黒髪と、気の強さを象徴するかのような凛々しい眉が特徴的だった。

打たれ弱い俺は、何度となく彼女の言動に傷つけられた。

それでも俺が彼女に惹かれたのは、その強さに憧れたからなのかも知れない。

けれど、酔った時の酒乱振りは、呆れるものがあった。

言葉を荒立たせ、人を平気で罵倒する。

いくら何でも言い過ぎだろう。

気の弱い俺は、そんなことさえも言えなかった。


出来心、だった。

友人の家に皆で集まり、酒を飲んでいた。その中には彼女もいた。

いつものように酔った彼女は、俺に酷い罵声を浴びせる。

馬鹿、阿呆、屑などの単語をいくつも織り交ぜて、俺を罵倒していく。

さすがに周りがなだめるが、彼女はそれでもその口を閉じない。

俺の何がそんなにも気に入らないというのか。

溜め込んでいた鬱憤が、限界点にまで来ていた。

やがて疲れ果てたのか、彼女はいつの間にか寝てしまっていた。

いつものように介抱を任され、別室にまで彼女を運ぶ。

もう限界だと、酔った頭で思った。

彼女を横たえた後、部屋を見回す。

机の上に、文房具立てが置いてあるのが目に入った。

定規やサインペン、そしてカッターなどがその中にある。

俺はその中の一つを手に取ると、そっと彼女に近づき、そして。


自分の犯してしまった間違いに気付くのに時間は要らなかった。やってしまった。

どうすればいい、どうすれば。

唐突に扉が開き、はっと振り向くと、そこには家主の友人が立っていた。

大丈夫かーと能天気な声を出していたが、

彼女の無残な姿を見てはっと息を呑み、「お前…」呟く。そこには、


「それはやっちゃまずいだろ…」


 油性の極太マジックで自慢の眉毛を繋がれた、彼女の寝顔が。



                   - 了


あとがき -

連続で更新作業。
もう一個の方で書きたいこと書いちゃったから、
こっちで何書けばいんだろー?みたいな感じ。
とりあえず、サークルで書いた2つ目の作品。
テーマは「体言止め禁止」「やってはいけないこと」
ちなみに私、これを書くまで、
体言止めと倒置法を勘違いしてました…
文章書き失格ですね。
時間なくて、あらかじめ作っておいた構想を基に、
適当に1時間くらいで書いたものなんですが、
意外とサークル内では好評だった作品。
どうでもいいけど、800字以内って縛りはムズいなぁ。
ホントさっぱり終わってしまう感じ。
まぁ文章の練習だからいーんですけど。


06/05/14


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