ジコタイワ -



「機械のような心を持ちたいと思う。」

「それは何故?」

「だって機械は失敗しない。」

「失敗?」

「うん。それに、誰かを裏切ったりしない。」

「そうなの?」

「そうじゃないの?」

「さぁ。」

「どっちなの。」

「知らない。だけど、どうやらキミは誰かを裏切ったようだね。」

「うん。どうしようもなく裏切って傷つけた。」

「そしてそのことで自分も傷ついている。」

「そうだね。だけどそれは当然の報いだと思う。それよりも、傷つけてしまった。それがイヤなんだ。」

「けれどそれは人として当然のことじゃないのかな?」

「そうなの?」

「人は誰もが誰かを傷つけて生きているのだよ。」

「誰もが?」

「そう、誰もが。」

「そうか。だけどだからって自分のしたことが正当化されるわけじゃない。」

「そうかもね。」

「そうなんだ。誰かを裏切ることはよくないんだ。」

「確かによくないかもね。」

「そして僕は、もう誰も裏切りたくない。」

「だから機械の心?」

「そう。失敗もしない、裏切りもしない。誰一人として傷つけずにすむ。」

「そうかもしれないね。けど、キミは人間だよ。」

「そう、人間だ。」

「人間のキミが、機械の心を持てるはずがない。」

「何故?」

「だって人には感情ってものがある。どんなに頑張っても、キミは結局人なんだ。」

「だけどもう。誰も傷つけたくないんだ。できれば独りで生きていきたい。」

「独りで生きればいいじゃないか。」

「それはこの世界ではムリだよ。必ず人は人と触れ合わずには生きていけないんだ。」

「山の奥にでもいけばいい。」

「そこで僕は生きていけるかな?」

「死ぬんじゃないかな。」

「死ぬのは怖い。」

「そりゃそうだ。」

「死にたくはないんだ。」

「ワガママかもね。」

「そうかもしれない。けれど、だから僕は人の中でしか暮らしていけない。生活力ないから。」

「生活力は自らつけていくものだよ。」

「山奥での暮らし方なんてわかるわけがない。」

「それもそうか。」

「うん。けれど人の中で生きていく以上、人と触れ合うのは避けられない。」

「けれど傷つけるのはイヤ?」

「そう。だから僕は機械の心が欲しい。」

「機械の心。それがあれば誰も傷つけない?」

「傷つけない。」

「裏切らない?」

「裏切らない。」

「そうか。じゃあキミは?」

「え?」

「キミはどうなの?」

「僕?」

「そう、キミ。キミは、そんな生き方をして悲しくないの?」

「仕方がない。もう裏切るのはイヤなんだから。」

「仕方がないの?他の誰かの為に、自分の心を犠牲にできるの?」

「できるさ。やってみせる。それに、機械は悲しいとも辛いとも思わない。だから平気。」

「そうか。だけど。」

「だけど?」

「キミは人だ。どうしようもなく人なんだ。」

「知ってる。」

「人はね。傷つけたり裏切ったりしちゃうけど、同時に誰かを癒したり助けたりできるんだ。」

「そうだね。」

「けれど、機械にそれができる?」

「できてもできなくてもいい。裏切らなければ。傷つけなければ。」

「…キミが、そうやって生きるということを。」

「うん?」

「悲しむ人がいたとしたら、どうしようね?」

「え?」

「その生き方を見て、誰かが悲しんでいたとしたら、どうしようか?」

「そんな人が、いるの?」

「いるかもしれないじゃないか。キミの生き様を見て、悩み苦しむかもしれない。」

「…そしたら僕は、どうすればいいんだろう。」

「答えは簡単じゃないか。」

「え?」

「人として生きればいい。」

「人として?」

「そう。裏切ったり傷つけたり傷ついたり裏切られたり、たまに幸せを感じたりして。」

「けど、それじゃまた、誰かを裏切ることになるかもしれない。」

「けど、それは誰かを悲しませずにすむかもしれないじゃないか?」

「…わからないよ。」

「わからないのなら、考えればいい。キミは、人間なんだから。」



                   - 了


あとがき -

前のがひたすらに明るい(というかバカ)話だったので、今回は路線を変えて。
微妙にシリアス?昔書いていたような、微説教的なお話かも。
あ、といっても昔書いていた話はもうサイトには載せてなかった。
まぁそれはそれとして。
とりあえず暗かったり明るかったりまた暗かったり。
じゃあ次は明るくなるかしらん。
それはさっぱりわからないけども。
とりあえずはテスト前のある日。


03/11/24




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