贈り物はなんですか? -


「プレゼントには何をあげるのがいいかって?」

はぁ?と言う顔になる彼に向かって、私は一生懸命こくこくと頷く。

「そんなもん、その人が一番欲しいものだろ」

むー、としばらくうなった後、

「…じゃあ何がいいの?」

「何故俺に聞く」

アホ。

「…君にあげたいからじゃん」

「別にいらないけどなぁ、俺は…」

そっけなく返す彼に、私はぷるぷると首を横に振った。

「だってだって、せっかくの誕生日なんだよ?プレゼントだよ?何かあげたいって、思うじゃない」

そうだ。
自分の恋人が、自分の大好きな人が誕生日を迎えると言うのだ。
何か渡したくなるというものが人間じゃないか。
と、思うのだが、彼は本当に興味がなさげで。
…そんな態度取られると、彼女としての自信とか、その辺傷つくじゃないですか。

「そんなこと言われてもなぁ、急に思いつくわけないじゃん」

はぁ、とため息をつく彼に、私はうぅーと恨めしげにうなって見つめる。
それに気付くと彼はぎょっと驚き、一生懸命悩み始めた。

「待て待て待て。すぐ考えるから。だから泣くな?な?
えーっとだな、うーんとうーんと…あ、あぁあったあった!」

「あるの?なに?なに?」

「ほらアレだよアレ。ゴキブリホイホイ。今家にたくさん出て、困ってて、さぁ…」

自分の欲しい物の程度の低さに気付いたのか、徐々に言葉尻をすぼめていく彼。

「…私そんなの贈りたくないよぅ」

「あぁすまないえぇとうーんとえーっとー…あ!」

「出た?」

「アレだアレ。ピザのCMで出てる、エビの浮き輪?アレ前から欲しいなぁー、とか…」

「…それもイヤ」

「うん、俺も誕生日にわざわざ贈られたくないな…」

「なんでそんなしょーもないものしか思いつかないの?」

「…なんか俺の人生そのもの否定された気分なんだけど…」

結構その意味合いも入っていたりするけどそれは内緒。

「それより、ほら、ないの?たとえば、服とかっ」

「ユニクロで十分だし」

「アクセサリーとかっ」

「俺金属アレルギーなんだわ」

「こ、香水とか!」

「あんなの臭くてつけてられんよ」

…私ちょっと使ってるんだけどなぁ。
少しショックを受けつつ彼の言葉を待っていると、突然何かを閃いたような顔になった。

「そうだそうだ、あれ!」

「うん、なに?」

「ほら、ジンジャーってあるじゃん?あの、体重移動でどうのこうのっていう乗り物。
アレなんかかっこいいなぁって思っててさー。あれなんかいいなぁ」

「…あのね、私、いちおー高校生なんですけど…あんな高いの買えないよぅ…」

ちなみに、80万円くらいした気がする。
そこまでの価値があるのかどうかはわからないが、プレゼントとしてはとても不適当に思える。
はっきりいって買う気はしない。ていうか買えないよ…

「あー…だよな、うん…じゃあ、何か、クッキーとか食べたい。お前の手作りのヤツ」

照れたように呟く彼に向かい、

「…私料理できない…」

…恥ずかしながら。全然でして。

「…そうか」

「うん…」

沈黙。
誕生日プレゼント一つに、一体何をこんなに議論しているのだろうか、私達は。
無性に情けない気持ちになって、はぁとため息をつく。
何か気の利いた物あげたいな、って思ってたのに…全然思いつかないし…
私の欲しい物選んだってそれが彼の好みとは限らないし…
なんだかなぁ。好きな人に何もあげられないのかなぁ。
私って…ダメな彼女かなぁ。
考えれば考えるほどミジメな気持ちになって、それに比例するように顔の角度も下を向いていく。
あぅ、何か泣きそう…それほどの問題じゃないだろうと彼は笑うかもしれないけど、
なんだかとても大切なことのように思えて、それができない私が悔しくて、情けなくて。
しかもそれで彼を困らせてるし…なんだかな。本当、私はダメかも知れない…

「んじゃ」

と、彼が沈黙を破ると同時に、私の顎を人差し指と親指でつまみ、上を向かせた。
すぐ正面には彼の顔。
目と目が合って、少しどきりとなって。
…って、ちょっと、近すぎじゃ



思考が止まった。



彼の唇が私の唇に触れたと気付いたのは、彼が顔を離してから。

「…これがプレゼントてことで」

その言葉で、私が彼にされたことを認識して。
頭に血が昇るのが自分ではっきりとわかった。

「あ、う…」

鏡を見なくても、自分の顔が赤くなっていくのがわかる。
きっと今私の顔は熟れたトマトみたいになってるはずだ…恥ずかしいくらい、すごい赤面症だから。
もしかしたら頭から湯気が出てるかも知れない。そのくらい、顔が熱い。恥ずかしい。

「…何か言ったら?」

呟くように言う彼の顔を見ると、心なしか頬が赤く染まっているような気がする。
…ちょっと、可愛い。

「え、えとあの、うんと…あれでよかった、の?」

「ん…ていうか、あれがよかった、から」

そう言うと、彼はそっぽを向いてしまった。
が、その頬は目に見えてわかるくらいはっきりと赤く染まっている。
ソレを見て、私はますますドキドキした。
あ、なんか凄い嬉しい。幸せ。

「…突然しちゃって、ゴメン」

謝る彼に、私はぷるぷると首を横に振った。

「う、ううん!ぜ、全然!全然ゴメンじゃなくてむしろありがとうでってソレって私のセリフじゃないよね
だってそっちの誕生日で私がありがとうって言ってどうするんだかじゃあえとどういたしまして?」

恥ずかしさで思わず早口でまくし立て、何を自分は言ってるんだろうとますます恥ずかしくなった。
そんな様子を見て、彼は照れたように笑い、

「はい、どうもありがと」

そして、そっと手を差し出してきた。
ちょっと躊躇いつつ、それでもしっかりとその手を握り返す私。
そのまま夕日の差し掛かる道をとぼとぼと歩き始めた。
あぁ、もうなんか幸せ。
このまま死んでもいいと思えるくらい。
一体誰の誕生日なんだろって疑っちゃうくらい。
だけど、一つだけ。一つだけ、不満というか、希望が。
口にするのはものすごい恥ずかしいんだけど…でも。
意を決してくいくいと彼の袖を引っ張ると、ん?と彼はこちらを振り向いた。

「あのね」

「何?」

「えと、私の誕生日、来月なんだけど」

「知ってるよ」

「それで、欲しい物なんだけど…今日と同じのが、いいなぁ、って…」

たまらなく恥ずかしくなって顔を背けた私に、彼はしばらく黙った後、からかうような声で。

「それまでこれはお預けですか?」

そのお言葉に、あぅ、と私は困りつつも、顔が赤くなるのをを隠せないのであった。




                   - 了


あとがき -

誕生日プレゼントに小説をーってわけで贈った作品。
ていうかだいぶ締め切り過ぎてんですけどね。ゴメンナサイ。
そいやしばらく恋愛物書いてないんじゃない?と思い、書いてみたわけですが。
…甘!激甘!
イヤ!恥ずかしい!一体誰ですのこんな文書いたのは!?(私デス
まぁそんなこんなの作品でした。楽しんでいただければ幸い。
あ、ちなみに作中に彼が言っていた欲しい物は、私が今欲しい物です。誰かクダサイ。
そんなこんなで。

03/09/06 テストから逃避しつつ

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