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キミと一緒なら - その日、いつものように彼と一緒に歩く川の土手は、やたらと風が強かった。
あとがき -「すっごい風だねー」 「ホント。気抜いたら飛ばされそうな」 笑いながら、うざったそうに長い髪を押さえる彼。 だから切ればいいのにといつも言っているのに、 彼はいつも「いーやこれは俺のポリシーだから」と切ろうとしない。 単に面倒なだけじゃないだろうかと思うのは私だけじゃあるまい。 「飛べるかなー?」 両手を広げ、鳥のように羽ばたいてみせる。 ちなみに私はと言えば、短く切り揃えているのであんまり気にはならない。 ただ、スカートだけがばたばたとはためいた。 別にいいんだけどね。下短パンだし。 「ってか、ちゃんと下押さえろよ。こっちが恥ずかしいんだけど」 が、彼はそうはいかなかったらしい。 「別にいいじゃん、どーせ誰も見てやしないし。見られても構わないし」 「お前ホントそーいうとこ大雑把な」 「いつまでも髪切らないキミにそーいうこと言われたかないなー」 それにしても、ホント強い風。 時折、何かのチラシやらコンビニのビニール袋やら木の枝が飛んでいく。 さらには傘やらゴミやら看板やら。 なんだかやたら飛んでいくが、最後のは見間違いとしておくことにする。 と。 ぶわっ。 やたら強い風が来て、思わず目を瞑る。 もうすぐ春とは言え、まだまだ外は肌寒いとゆーのに。 この風が、冬の厳しい寒さを思い出させるほどにきつい。 服の内側にまで吹き込んでくる風に、思わず首をすくめてしまう。 にも関わらず、私は、何故だか楽しい気分であった。 非常にウキウキして、とまらない。 「なーにニコニコしてんだか」 「あ、わかる?」 「アホかと思うくらいに笑ってるし」 「アホとは何さアホとはー」 「だって、ホントに楽しそうだからさ。お前って祭りの日にはしゃぐタイプな」 「や、それよりも台風にワクワクするね。学校休みになってもならなくても」 「変なヤツ」 「そんなヤツと付き合ってるキミもそーとー変り種じゃないの?」 「そーかもな」 言いながら、彼も楽しそうに笑った。 これが追い風だったら楽なんだけどね。 向かい風は向かい風で楽しいというか。 なんかこう、血が騒ぐと言うか。 こんな風に考える私はやっぱり変わり者かもね。 「いてっ」 と、何かが当たったらしく、足を押さえながら彼が呟いた。 「何、どーかした?」 「や、傘が飛んできた」 「危ないねー」 「ホント。先っぽが飛んでこなくてよかったよ」 「だね。頭に刺さってたらさすがのキミでも危なかったね。血が出たかも」 「・・・血だけで済むとは思わないんだけどな」 「じゃあコブかな?」 「ターミネーターじゃないぞ俺は」 漫才のような会話をしながら、問題の傘を拾い上げた。 「あ、これ新品だね。もったいないなー」 「お、ホントだ。でもさすがに今日は使い物にならんだろ」 何気なしに傘を開いてみると、骨はどこも折れていないし、傘の部分もちゃんとしている。 さぞかし持ち主は悔しがってるだろうなぁ。 まぁ、コンビニで売ってるような傘だから、また買い直せばいい話だろうけど。 と、私の頭に一つ楽しい考えが浮かんだ。 「ね、ね」 「んあ?」 「さっき言ったこと覚えてる?」 「あ?コブだけで済むって?」 「違う、それじゃなくて」 「血が出るくらいで大丈夫?」 「違う、もっと前」 「スカート押さえろ?」 「ちーがーう!空、飛べるかなってヤツ」 「あー、言ったっけ」 「それさ、出来ると思う?」 「は?」 「思わない?こうさ、傘広げて風に乗って、ばさっと」 「・・・ムリじゃないの?」 「そっかな」 「第一危ないっての」 「私は、そうは思わないけど?」 「は?」 言うなり、くるっと向きを変え、来た道の方を向いた。 風が背中をぐいぐいと押してくる。 今にも走り出せと言わんばかりに。 あぁもう。 口がにやけるのを止められない。 「ちょっ、おい?」 彼が止める声も聞かず、私は風に乗って走り出していた。 背中が風で押され、ぐんぐん加速する。 まるで風になったように気分になり、ワクワクする。 そして、十分に加速したところで、傘を広げ。 土手の下に向かって、飛んだ。 「っの、バカー!」 彼の慌てた声が耳に入ったかと思うと。 逆風が土手の下から吹き上がってきて。 体が、浮いた。 うわ、ホントに飛んだ。 体が無重力感に捕らわれ、頭の中が真っ白になる。 地面が遥か下の方に見える。 空が、やたらと広く感じる。 風が、心地いい。 鳥って、いつもこんな感じなのかなぁ。 だとしたら、ずるい。うらやましい。 と、そこまで考えたところで。 ぼきっ。 折れた。 たちまち、重力に従い、地面に向かって急加速する。 あー、やばい。死ぬかも。結構高いし。 どうせ死ぬならコンビニの中華まんもっと食べとくんだったなぁ・・・ そんなこと考えている間にも、あっという間に地面が近づいてきて、そして。 どかっ。 地面にしては柔らかい何かの上に落ちた。 とりあえず、死んではいないことだけは確実らしい。 「・・・えーっと」 「・・・」 「生きてる?」 しばしの沈黙の後、『地面にしては柔らかい何か』に向かって、尋ねてみた。 「・・・三途の川が見える」 「それにしちゃ、やけに汚れた川だよね」 「あぁ、こんなとこは渡りたくないな・・・」 「だよね。魚、住んでなさそうだし」 「あぁ、昔はいたんだけどな・・・って、いつまで乗ってるんだよ」 「や、彼女の尻に敷かれる彼氏実写版というか」 「重いっての」 「失敬な。これでもクラスじゃ結構痩せてる方なんだよ?」 「そーいう問題か・・・って、危ないだろーが!何ホントに飛んでるんだよ!」 がばりと起き上がるなり、彼は怒鳴りつけてきた。 「あー・・・ん、ゴメンね」 本気で怒っている彼に、少し申し訳なくなり、謝る。 謝りながらも、ちょっと嬉しくなってる私はやっぱりひねくれてるかもしれない。 「ホントに・・・怪我したらどうするつもりだったんだよ?」 「んー、それだけはないかな、って」 「は?なんで?」 一瞬間を起き、ちょっとはにかみながら。 「キミが、助けてくれるって信じてたから、さ」 「・・・はぁ?」 「キミと一緒なら、空も飛べるんじゃないかなって。そー思いまして」 少し恥ずかしくなって、照れ隠しに笑った。 そんな私を見て、やれやれ、とため息をつきつつ、彼もまた、笑っていた。 「まぁ、慣れたけどさ。お前のそーいうとこも」 呆れたように、けれどどこか楽しそうに、笑っていた。 ホントにさ。 ホントに、そう思ったんだ。 キミと一緒なら、どこまでだっていけるんじゃないかって。 空だって飛べるんじゃないかって。 傘は折れてしまったけど。 けれど、傘なんかなくたって、キミさえいれば。 これって、甘えなのかも知れないけど。 でも、キミにベタ惚れだって証拠でもあるわけなんです。 まぁ、恥ずかしいから、口には出さないけど、さ。 「で、で。私、飛んだよね?飛んでたよね?」 「あー・・・1メートルくらいな」 「えー?そんなもんだったかなぁ・・・」 「傍から見たらな。で?飛んだ気持ちはどうだった?」 怒る気力もなくなったのか、それとも呆れ返ったのかわからないが、 なんだか開き直ったように笑いながら、尋ねてきた。 「気持ちよかったよ。まぁ、一瞬だったけどさ。鳥ってのはずるいね」 「そんなに?俺もやってみよっかな」 「やってみれば?下敷きにはならないけどね」 「・・・薄情モノ」 「だいじょーぶ。キミなら死なないって」 「何を根拠にそんな・・・」 私がちゃんと助けますから。 その一言は心の中だけで。 私はただ、向かい風に向かって笑ってみせるだけだった。 - 了 ホントに傘で空を飛べるのかしら。 そんな疑問はさておき。久々に短編です。 1ヶ月ぶり・・・ホントにここは小説サイトなのかと。 てか、あれですね。 私が更新できるようになって初の自分でアップした作品だったりするんですよ。 昨日清水さんちに遊びに行く最中に、やたらと風が強くて、思いついた話。 他にも元ネタはあったりするんですけどね。 まぁ、そんな感じで。 よろしければ、感想などいただけるとかなり嬉しいです。 掲示板とか寂しいことになってるしw; まぁ、そんな感じで。でわでわ。 03/02/23 !-この小説は小説検索エンジン"楽園"に登録されてます- ∠short ∠index |