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タイムマシーン - 俺の目の前に突然現れた、その変な男は、開口一番。
「君は、自分の過去を変えたくないかね?」 変なことをのたまった。 ホントに、見れば見るほど『変』としか言いようのない、 逆に言えば『変』の一言で終わってしまう、 そんな男だった。 男はよれよれの白衣を着て、いかにも科学者風を装っているが、 俺の目から見れば、そいつはちっとも科学者には見えなかった。 だって、白衣の下が全身タイツ。 イヤ、正確に言えば全身タイツではないのかも知れないが、 だがその何とも言えない形状をあえて言い表すとしたならば、 やっぱり全身タイツしかないわけで。 それも、全身ラメ入り。不思議タイツとでも呼ぶべきか。 その男は、それをさも当然のように着ていて、 それがさらにその男の『変』を加速させていた。 だが、考えてみれば、その格好だから『変人』で済んでいるわけで、 もし下に着ているのがスクール水着だったりするような『変態』であった場合、 俺は間違いなくダイヤル1と0の組み合わせだけで召喚できる 国家公務員を呼び出さなくてはいけなくなっていたので、まぁまだマシである。 あくまでマシなだけで、ほとんどギリギリの領域であるが。 「・・・質問してもいいか?」 冷静を装いながら、俺はその男に声をかけた。 「あぁ、もちろんだとも。」 自信満々に胸を張りながら答える男。 一体何に対してそんなに自信を持っているのか質問してやりたいところだが、 そんな質問はしなくていい。 しなくてはならない質問の方が山積みだった。 「あんた、どうやってこの部屋に入った?」 ちなみにここは俺の自室である。 学校から帰ってくると、この男はさも当然のようにこの部屋にいた。 つーか、不法侵入として国家公務員を召喚してもいいんじゃないだろうか。 しない自分はよほどの善人だと思う。いや、思いたい。 「合い鍵があるからな。」 「なんで持ってるんだよ。」 「まぁ細かいことは気にするな。」 「細かくねぇだろ。」 「他には?」 強引に質問を変えられる。この野郎。 溜め息をつきつつ、質問を変える。 「あんた誰?」 「私か。私は未来人だ。」 「真面目に答えろよ。」 「私は至って真面目だが。」 ・・・普通自分達のことは『未来人』などとは呼ばないと思うのは俺だけか? 「じゃあ何か?その白衣の下の全身タイツは未来服か?」 「よく分かったな。これが未来の流行りだ。」 「・・・みんな着てるの?」 「当たり前だ。」 「恥ずかしくないのか?」 「それはこの時代の価値観だろう。未来じゃみんなこれだ。機能性もいいぞ。」 「たとえば?」 「虫が寄りつかない。」 「・・・地味に便利だな。」 「あと、汚れが付きにくく、落としやすい。」 「洗えるのかその服・・・しかし、そりゃ奥様方も喜ぶな。」 「うむ。今なら3枚で2万円だ。」 「・・・高いのか安いのかわからん。」 「まぁ、ブランドなんかもあるからな、値段はピンキリだ。」 「・・・その白衣は?」 「これか。これは、この時代の科学者らしさを追求するために着ている。」 「白衣着れば科学者ってわけじゃねぇだろ。」 「違うのか?」 「コスプレに近いな、それは。」 「ふむ、そうなのか。わかりやすさを追求してみたつもりなのだがな。」 「いやわかりにくいって・・・って、んな話はどーでもいい!」 脱線しすぎて思わず隣の路線に移りそうになった話を、全力で引き戻す。 服の話なんざどうだっていい。んなことは細かい話だ。 問題は。 「あんた・・・ホントに未来から来たのか?」 「そう言っているだろう?その証拠に、ほれ。タイムマシーンだってあるじゃないか。」 「それのどこがタイムマシーンなんだよ・・・」 ビシッと『タイムマシーン』に向かって自信満々に指を指すその男に、 思わず頭を抱えながら、俺は言った。 たとえ俺じゃなくとも、頭を抱えずにはいられないだろう。 だって、どこからどう見てもただの勉強机。 「引き出しでも開けろってか・・・」 「おお、よく分かったな。そこが入り口になっていてだな・・・」 「パクリじゃねぇか!」 「何を言う。偉大なる青タヌキの知識を借りただけだ。」 「未来にもその漫画は存在しているのか・・・」 「うむ。その道具のありえなさっぷりに未来じゃ思わずバカウケだ。」 「このタイムマシーンも十分ありえないと思うんだが。」 「まぁありえてしまったのだから仕方あるまい。」 「うぅむ、まぁ百歩譲って認めてやるとして。どうしてまた俺のところに来た?」 その質問を聞くと、男はニヤリ笑い、 「君が選ばれたからさ。」 自信満々に言って見せた。 「・・・誰に。」 「私にさ。」 「・・・どうやって選んだ?」 「あみだくじだ。」 「なんでやってることは原始的なんだよ・・・」 「そんなことはないぞ!ちゃんとこの時代の世界中の人間の名前をインプットし、 私のスーパーコンピュータにて一目見ただけではどれに当たりがくるか分からぬよう、 複雑でありながらある種芸術的でさえあるくじを作り出し、 さらにそこから公平を期す為にだな・・・」 「あぁわかったわかった。説明はいらん。 つーかそんなことはどうだっていい。 んで、何だっけか?最初の質問は。」 「そうだそうだ。それが本題だったな。 君は、自分の過去を変えてみる気はないかね?」 ・・・ハッキリ言って。 全然信じる気にはならなかった。 こんな変な男の言うこと、信じてしまったら、こっちまで変人になってしまう。 だが、信じざるを得なくなった。 だってこいつ、今日の競馬の結果、全部当てやがったし。 「信じられねぇよ。」と呟いた俺に、自信満々に 「なら証拠を見せてやろう。」などと言ってみせた時はバカかと思ったが、 目の前でさも当然のようにやられると、まるでこっちがバカみたいだった。 まさに、『未来でも知っていないと出来ない芸当』なわけで。 俺は呻いてしまった。 あの万馬券、まさか誰も予想してなかっただろうに・・・勿体ない・・・ いや、そっちじゃなくて、だ。 こんな変人を信じなくてはいけないことに対して。 信じると言うことは、その質問の意図も自然と理解できるわけで。 つまり。 「このタイムマシーンを使って、君の過去を変える気はないかね?」 というわけだ。 「・・・なんでまたそんなことをさせる?」 非常に不可解であった。 すると、そいつはまたもニヤリ笑って。 「何でだと思う?」 「知るか。」 「それじゃつまらんだろーが。少しは考えい若者。」 「うるさい不法侵入者。既に頭は思考の渦なんだよ。」 「ま、そりゃそーだろうな。うし、じゃあヒントを言ってやろう。」 人差し指をピンと立て、一言。 「確かめたいからさ。」 「・・・何を?」 「何だと思う?」 ・・・堂々巡りかよ。 「だからしらねぇって・・・」 「ふふ、まぁその内君にも分かる日が来るさ。」 「分かりたくもないな。」 「そう言うな。まぁとにかく、あれだ。 『もしも願いが叶うなら〜』とか、そんなノリだな。 ただ、ここで違うのは、『もしも』じゃない、ってことだ。 過去に戻って、昔の過ちをいくらでも直すことができる。 しかも、私からは何の条件も出さない。タダでやってやろう。 さぁ、どうする?」 「・・・命の保証は?」 「私が実際にこの時代にいることが、何よりの保証だと思うが?」 ニヤリ笑うそいつを見て、思わず考え込む。 真面目に考えてみれば、これは誰もが一度は願うことだろう。 『あぁ、あの時にあんなことをしなければ。』 『せめてあの時もっとちゃんとやっておけば。』 『あぁ、あの時に戻れたら−』 それは、誰もが願うこと。 けれど、絶対に叶わぬこと。 そのはずだった。 それが今、目の前で、あまりにもあっけなく可能になって、俺に手招きしている。 あの時に戻って、あの時の自分に忠告してやることが出来ると、言っている。 思えば、俺の人生、失敗ばかりしている。 いつもいつも肝心なところでミスをやらかしては、恥をかいてきた。 人間関係でもいらんことしいで、後々になっても忘れられない大ミスをしたこともある。 彼女ともいつも長く続かないし・・・まぁそんなに何度も付き合ったことあるわけじゃないけど。 とにかく、それら全てを帳消しに出来る− 全ての過ちを直し、俺の人生は順風満帆へと切り替わる。 想像するだけで、少し身震いが起きた。 リセット可能な人生・・・凄いことだ。 「結果は、出たかね?」 ニヤリ笑いながら尋ねてくる男に、俺もニヤリ笑って、答えた。 「お断りだね。」 少し戸惑うかと思ったが、意外にも男はそのまま表情を崩さなかった。 「それはまた、どうして?」 理由を尋ねてくる男に、俺は少し考え、答えた。 「確かに、俺はいつも失敗ばっかりして、後になって後悔ばっかしてる。 後悔先に立たずなんて言葉は、俺の為にあるんじゃないかって思える程ね。 何度『時間が戻ればなぁ』と願ったかわかんねぇし、数える気も起きない。 だけど、実際に時間を戻すことってのは、ダメなんだよな。 それじゃいかんと思うんだわ、俺は。 確かに後悔することばっかりしてきたけど、でも、それは昔の俺が、 馬鹿なりに頭使って出した答えなんだよ。 それが正しいかどうかなんて、もちろんその時は分からない。 後で、『あぁ、あっちの方が正しかったかも知れない』なんて考えることもいくらだってある。 けどよ、それを後で修正なんて出来ちゃったらさ、 その昔の俺に対して、失礼な気がするんだ。 昔の俺が、真剣に考えて出した答え。 だから、後でその結果考えてみて、間違ったかも、って後悔しても、 それを変えることは、昔の俺を裏切ることになる。 たとえ間違いでも後悔しても、それがきっと俺には『正しかった』んだから。 それに、その失敗の上で俺って人間は出来てるんだ。 そう考えれば、失敗だって単純にマイナスばっかってわけじゃないだろ? だから、俺はこのままでいいよ。 それにさ、人生ってのはやり直せない。だからこそ楽しい。違うかい?」 全部をバーッと言い終えた後で、なーに俺はこんなクサイこと言ってるのかね、 とか我に返ってみたりする。 しかも、こんな変人の前で。 でも、まぁこれが俺の考えなのだから、仕方ない。 そう、これが俺にとっての『正しい答え』なのだから。 全てを聞き終えて、なお、そいつはニヤリと笑っていた。 まるで、『その言葉を聞きたかった』とでも言いたげに。 とか予想していたら、 「・・・その言葉を聞きたかったんだろうな、私は。」 おお、俺ってばエスパーの才能あるかも。 「ま、別にあんたがどんな答えを期待してたかはどうでもいいよ。 つまり、俺にそれは必要ねーってことさ。」 そう言って、部屋の真ん中にドンと置かれた勉強机を指さしてみせる。 「だろうな。ま、それじゃ私はそろそろおいとまさせていただくとしようかな。 用事も済んだことだし、な。」 そう言って、机の引き出しを開け、足を突っ込ませる男。 どう考えても厚さ10センチ程度しかないその引き出しに、 170センチ(多分俺と同じくらいだろう)程の大きさの体は、すっぽりと入っていった。 ・・・一体どんな原理になってるのか、それは知りたい。 と、頭だけになったところで、そいつはこちらを振り向いた。 「ところで君、私のことを『変』だと思わなかったかね?」 最後の最後まで変な質問をしてくるその男に、 「あぁ。」 俺は笑って答えてやった。 ま、変だと思わない方がおかしいだろう。 というか、自分で自覚してたんか? すると、そいつはやっぱり、ニヤリ笑って。 「私も、そう思ったよ。」 相変わらず、変なセリフをのたまった。 「頑張れよ、工業系。」 ・・・なんであいつ、俺の進路まで知ってるんだか。 びっと立てた親指も引き出しに吸い込まれると、バタンと引き出しは内側から閉じられた。 そのまま某青タヌキのワープホールよろしく消えるのかと予想しながら待っていると。 机は見事なまでの人型ロボットに変形して、マッハ2(推定)で窓をかち割って出ていった。 ・・・最後の最後までわけわからん・・・ 思わず頭を抱え込み呻く。 机である必要性、全然ねぇじゃん・・・ やっぱり未来はわけわからん。 つーか、あんな未来には辿り着きたくない。 むしろあれ、宇宙人だろ・・・ 少なくとも、あぁはなるまい。そう肝に銘ずる。 「ま・・・とにかく、勉強するか。」 窓から吹き込んでくる風の冷たさが、俺を現実へと引き戻していった。 いつか来る未来のために、失敗と成功を積み重ねる、そんな現実へと。 「って、窓ガラス代弁償しろよ!」 けれども、現実はやっぱり厳しい。 - 了 あとがき - すみません、たまには壊れてみたかったのです え?いつも壊れてる?はいごもっとも まぁいいじゃん?ギャグの方が書きやすいのですよこれが さて、今回のテーマみたいなんは、「人生はやり直しがきかないのよ」って感じ まんまですね、はい いやギャグだから最初からテーマなんてあってないようなもんだしね それとは別に、作中に一つ「秘密」を入れてみました さて、それは何なのか 分かった人には私の熱い抱擁を! あ、いらないですか。そうですか。ごめんなさい いや殴るのは痛いのでやめて下さい まぁ、大した秘密でもないですけどね。 結構ちらつかせているし それも楽しみの一つにして改めて読んで下さると嬉しい限り でわでわ やや壊れ気味なアキさんでした !-この小説は小説検索エンジン"楽園"に登録されてます-! ∠short ∠index |