春よ恋。 -



春うららかな日。

穏やかな光が、ベンチの上で寝ている俺をほんのり温める。

やっぱり春はいいね、のんびりできて。

ただ、出会いの季節とか言われるのは、俺はちょっと嫌だけど。

出会いがないから。

出会いを作ることはしてやってるけど。

つまり。



「あの・・・」



可愛らしい女の子の声が上から聞こえる。

目を開けて見上げると、やっぱりそこには可愛い女の子が。

そうしてまた、俺は出会いのきっかけを生むわけ。

俺からすりゃ、俺なんて普通の人にしか見えないのだが、

どーいうわけか、周りの人間は、よく相談相手に俺を持ってくるのだ。

そんな世話好きに見えるのか・・・?

まぁ、とりあえず来るモノにはちゃんとしたアドバイスをしてやろうと思い、

相談に乗ってるうちに、どんどん噂が広まって、今じゃすっかり校内の名物相談相手。

今では、このベンチが相談場所だと、生徒達の暗黙の了解にすらなっている。

しかも、その相談というのが、大抵色恋沙汰だから、出会いのない俺としては悲しいわけだ。

特に、こんな可愛い女の子が相手の場合、なおさら。

やれやれ、と思いつつも、真面目に応えないと自分が気に食わないから、

しょうがなく応える。

こんなだから、相談相手としてもってこいと思われるわけだ・・・



「俺に相談?」



分かっていながらも、一応訊ねる。

もし相談じゃなかったとしたら、間抜けになるからだ。

だが、もちろん、その心配は杞憂だったようで。



「えぇ、その・・・」



「恋愛関係?」



「・・・はい。」



やっぱりね。

心の中で溜め息をつきつつ、仕方ないか、と考える。

こうして、また俺の手で、可愛い女の子が誰かのモノになってしまうのか・・・

うぅ、かなしーなぁ。

それでも真面目に応えてしまう自分が、憎たらしいやらなんやら。



「相手は?どんな人?」



この手の相談は悲しいので、ちゃっちゃと答えていくことにしている。

女の子は、ちょっと躊躇いながらも、話し始めた。



「えっと、その人、周りの人に対して結構気配りとか出来てるんですけど、

 自分のこととなると、すっごい鈍感で・・・

 で、私はその人にそれとなく伝えてるつもりなんですけど、
 
 相手は全然気付かなくて・・・ちょっと不安なんです。うまくいくかどうか」



頬をかすかに赤く染めながら、女の子は答える。

ホントに好きなのね・・・羨ましいよ、君みたいな可愛い子にそこまで思われている男が。



「そっか。

 じゃ、君は、そのことを直接相手に伝えたの?」



「え・・・いや、それは、まだ・・・」



「だろうね。

 でもね、もしかしたら、その人は鈍感なんじゃ無いかも知れないよ?

 ただ、ハッキリしてくれないと、その気持ちがホントかどうか、信じられないのかも知れない。」



「そう、なんでしょうか・・・?」



「言い切ることは出来ないけど、確率としてはあるよ。

 まぁ、ホントに鈍感なだけなのかも知れないけど。

 どっちにしろ、やっぱり君が伝えないと。」



「で、でも・・・私、自信がありません。

 もし振られたりしたら、とか考えると・・・」



そう言って、不安そうに俯く彼女。

それに対して、俺はあくまでも穏やかに彼女に答える。



「そうだね、確かに不安に思うだろうね。

 俺も、君のような立場になったら、きっと同じように不安になると思う。」



「・・・」



「でもさ、そこで進もうとすることこそ、大事だと思うんだよ。

 結果よりも、過程。

 君は、今の恋が楽しいと、思うかい?」



ちょっと戸惑いながらも、こくん、と頷く。



「でも、もっと楽しくなりとも思うだろ?」



また、こくん、と頷く。



「じゃあ、やっぱり、君は直接言うべきだよ。

 どうなるかは分からない。もしかしたら失敗するかも知れない。

 でもね、きっとそれでも、君はそれが楽しかった、

 って胸を張って言えるようになると思うんだ。

 それが、君をもっと成長させると思うから。

 だから、言ってみよう?

 言えなかった後悔より、言えた喜びの方が、きっと良いに決まっているから。

 もっと楽しくなるためには、言ってみるしかないよ。

 それに・・・」



「・・・それに?」



「君ほど可愛い子を、振るような男なんていないって。

 俺が保証するよ。」



俺がそう言うと、女の子はくす、と笑い、やがて安心した表情になる。



「ありがとうございました。

 なんとなく、胸の支えが取れたような気分です。

 これで、私も告白する勇気が出来ました。」



そう言って、彼女は幸せそうに笑った。

きっと、振られた後も、彼女は寂しいながらも、こうして笑うんだろう。

この笑顔を見るために、俺は相談に乗っているのかも知れない。

それを見るだけで、こっちまで幸せになれたような気分になれるから。

たとえ春が来なくとも。報われなくとも。

しばらくは構わないと、俺は思える。



「そっか。お役に立てて良かったよ。

 頑張ってね、応援するよ。」



「えぇ。では。」



そこで、女の子は一息ついた。

何だ?と思っていると・・・







「あなたが、好きです。」







春うららかな日。

平和でのどかなその学校のベンチにて、

相談好きな少年と、頬を染めた少女がいた。

少年は、突然の出来事に目を丸めつつも、ぼんやりと一つの事実を認識していた。

どーやら俺は鈍感らしい、と。






                    - 了


あとがき -

こんにちは、アキです

今回、久々に短編恋愛モノを書いてみました

あぁ、でも「笑って笑って」があるか・・・

まぁ、ギャグ系やら、シリアスやら、いろいろ書いたので、息抜き、と言う形で

現在も長編書いてる途中なんですよ

でも、ホントこーいう話、私好きです

ほんわかのんびり、みたいな

一番自分らしいなー、と思います

まぁ、そんなわけで、これからもこーいうの書いてくと思います

こんな感じが好きな人も、そうでない人も、読んでくれるとありがたい限り

さらに感想なんてくれたら、もう・・・(しつこい?)

ま、そんなわけで

ではでは





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