僕と子猫 -



電車が向こうからやってくる。今日も始まる退屈な一日。

一体、あと何回これと同じ日を繰り返せば、終わりが来るのだろう。

こんな、退屈で憂鬱な毎日に。

いつものようにそんなことを考えながら、だがしかし、その日はいつもとは違っていた。

足元を見ながら歩く僕の目に、一匹の子猫の姿が入った。

小さく、か細い声で鳴く子猫の姿が。

捨て猫、か。

残酷な人間に、身勝手な理由で捨てられてしまった、可哀想な存在。

ただそいつは、聞くべき相手もいないのに、必死に鳴いていた。

まるで、「自分はここにいるよ」と、世界の誰かに呼びかけるように。

それを見た瞬間、何故だろう、僕の足は、そこから動かなくなってしまった。

階段を上る人々は、その様子を哀れみの目で見ながらも、

皆自分の事に精一杯の様子で、誰一人として足を止めようとはしなかった。

電車が着く。僕も、行かなければ。


プシュー、ガタン。


駅から人気がなくなる。

走り去る電車を見送りながら、僕はその子猫の前に、座り込んでいた。


「お前のせいで、乗れなかったじゃないか」


それに返事するかのように、子猫は小さく鳴いた。

だが、言葉とは裏腹に、電車のことなどどうでもよかった。

むしろ、まるで自分を見ているようで。

ほっとけなかった。


「・・・何か飲むか?」


子猫はまた、ひとつ小さく鳴いた。

何がいいだろうかと少し迷い、結局ホットミルクココアを選び、

十分に冷ましてから、その子猫のために置いてあるのであろう、小皿に注ぐ。

子猫は、自分の母親からしか餌をもらわないと何かで聞いたことがあったので、

少し心配だったが、子猫は匂いを嗅ぐなり、弱々しくも飲み始めた。

ホッとしながら、しばらくそのまま様子を見ている。

「美味いか?」

声に反応したのか、顔を少し上げるも、すぐにまたココアに戻った。

よっぽど気に入ったらしい。

ほんの少し、嬉しい気持ちになる。

そんなことを考えている間に、子猫があっという間に小皿に入ったココアを

飲み終えてしまったので、新たにまた入れてやると、

今度はさっきよりも若干元気よく飲み始めた。

二杯目を飲み終えると、僕を見上げて、にゃあ、と鳴いた。

ひどく、愛しく思えた。

それが、子猫への哀れみからなのか、自分に似ているという親近感からなのか。

その答えが見つかる前に、次の電車が着いてしまった。

残りのココアをついで、僕はその場を去ろうとする。

すると、子猫が、寄り添うようについてきた。


「悪いけど・・・これに乗り遅れたら遅刻するんだ。また後で、な?」


それでも子猫はついて来ようとするが、無視して電車に乗るために階段を上る。

子猫の鳴き声が、次第に遠くなってゆく。

僕が帰ってくるまでに、あいつは拾われるだろうか。

それは、嬉しい気もするし、ちょっと寂しい気もする。

ただ、あいつが僕のこの日常を少しは変えてくれるような、そんな気がした。



学校に僕の居場所はない。

ただでさえ内気で無口な上、人付き合いは喧嘩と同じくらい苦手で。

そのせいで、僕は今日も窓際で一人昼食を取っている。

まるで、あの子猫のようだった。また、あの子猫を思い出す。

授業中も、さんざん思い出していた。おかげでノートはだいぶ白紙のままだ。

あの子猫は、まだあそこにいるのだろうか。

心優しい誰かが、拾ってくれただろうか。

道路に飛び出して、車に轢かれてしまっていないだろうか。

あの辺は、田舎で車の通りが少ないから、その心配は少ないけれど。

どうにも、あいつの事を考えると、そわそわしてしまう。

そう言えば。

僕に似ていると思ったけれど、僕とは確実に違うところがあった。

あの子猫は、必死に周りに呼びかけていた。

けれど。

僕には、その勇気すらない。

拒絶されることを恐れて、ただただ独りでいる。

声を出すことさえしないで、常に下ばかり見ている・・・そんな毎日を繰り返している。

あいつが、羨ましい。

ふと、空を見上げる。

見上げた空は、僕の気分を表すかのように、どんよりと曇っていた。

午後から雨が降るって言ってたっけな・・・

あの子猫は、大丈夫だろうか。

考えている内に、雨はポツリポツリと降り始め、あっという間に土砂降りになった。

窓を強く打ち付ける雨を見て、ますます心配になる。

もし、誰も拾っていなかったら、弱って死んでしまうかも知れない。

今頃、あのか細い声で鳴いているんだろうか?

早く行ってやりたい。

いてもたってもいられなくなる。

でも、授業をサボる勇気すらない僕は、そのまま窓の外を見続けるくらいしかできなかった。



午後の授業が終わるなり、僕はすぐに駅に向かった。

相変わらず外は土砂降りで、しかも僕は傘を持っていなかった。

天気予報を見てきたのに、その内容を思い出したのが授業中ではどうしようもない。

いつもなら少し弱まるまで教室か図書館にいるのだが、今日はそれどころじゃなかった。

あの子猫は、僕が教室で授業を受けている間も、

ずっとこの雨の下、独りで鳴いているのかもしれなかったから。

駅に到着すると同時にちょうど来た電車に乗って、あの子猫のいる駅へ向かう。

あそこは、さっきも言ったけど、田舎で、人口が少なく、駅も無人だ。

だから、あの子猫が誰かに見つけられる確率は少ない。

だから、一層不安になる。

普段は乗り心地がいいと感じている電車が、今日はやたら遅く感じた。

こんなにイライラしたのは初めてかも知れない。

そうして電車に揺られること約5分、ようやく目的の駅にたどり着いた。

僕は、駅員に定期を見せるなり、階段を駆け下りた。

そして、朝、子猫を見つけたあの場所に向かう。

はたしてそこに、子猫の姿は、なかった。

動悸が、激しくなった。

誰かに拾われたのだろうか・・・それとも、車に?

最悪な展開が再び頭をよぎった瞬間。


にゃあ。


あの、小さく、か細い声が、聞こえた。

瞬間、体中の緊張が解ける。

声のした方向を見ると、階段下の空間に、雨宿りするように、子猫はそこにいた。

よくよく見ると、そこには、捨てた時に使われたのであろう段ボールがあった。


「そこがお前の家か・・・?」


また返事をするように、子猫は鳴く。

よく見ると、子猫はその小さな体を、寒そうに震えさせていた。

僕は、子猫を抱きかかえると、一緒に階段下に潜り込んだ。

そこは雨も風も入って来ず、隠れるには絶好の場所と言えた。

僕は子猫を抱きかかえてそこに座り込み、ふと、空を見上げた。

空は相変わらずどんよりと曇っていて、雨は止む気配も見せない。

子猫はと言えば、震えを止めて、僕の胸の中で安心して丸まっていた。

顎のとこを撫でてやると、気持ちよさそうに目を細める。

やっぱり、ひどく愛おしかった。

それから、僕は朝に買ったホットミルクココアをまた買い、子猫と一緒に飲んだ。

子猫はこのココアがとても気に入ったらしく、そのほとんどを自分だけで飲んでしまった。

空になった缶を捨ててくると、それからまた子猫を抱いて、

二人して空を見上げながら、雨が止むのを待った。

その時間は、長くも感じられたし、一瞬にも思えた。

でも、今まで過ごしたどんな時間より充実していたのは、確かだった。

明日も、一本遅くしよう。

そんなことを考えていたら、雨が止んだ。



その日から、僕の生活が、変わった。

毎日を子猫のために過ごすようになった。

家に持ち帰りたかったのだが、うちの母は猫嫌い(アレルギーらしい)であった為、

ここで飼うことを余儀なくされた。

その為、朝は早くに行って、遅刻ギリギリまで子猫と遊んだ。

そのまま一日を過ごしたかったのだが、さすがにそれは臆病な自分にはできなかった。

相変わらず、子猫はホットミルクココアを美味しそうに飲んでいた。

試しに、普通の牛乳とか、猫用のも持っていってみたけれど、

一番飲んだのは、やっぱり120円のホットミルクココアという、不思議な猫だった。

帰りは帰りで夜遅くなるまで、子猫と一緒に遊んだ。

子猫は、僕が階段から下りてくるのを見ると、すぐに傍にやってきてくれた。

待っててくれる人(猫だけど)がいるというのは、ひどく幸せな気分になれる。

学校や家では感情をまるで見せなかった僕は、この子猫の前では、自然に笑っていられた。

ボールを投げてやると、それに対して必死になってじゃれて、

抱きかかえていると、子猫は安心しきって、じっとしていた。

そんな子猫の様子を見ていると、僕も心の底から安心できた。

こんな僕にも、何かの為に出来ることがあるなんて。

自分の存在にも、意味があったのだと、ちょっとは考えられるようになれて。

ひどく舞い上がっていた。

一時の安らぎに身を任せて。

子猫に、名前を付けるのも忘れていたほど。


そんな生活が、二週間ほど続いた。



その日、僕がいつものように階段を急いで下りていくと、いつもの場所に、異変があった。

数人の、中学生と思える連中が、階段下の空間で、何かを囲んで遊んでいた。


(まさか・・・)


イヤな予感に駆り立てられ、駆け足を二段飛ばしに切り替えて階段を一気に下りると、

案の定、そいつらが玩具にしていたのは、あの子猫だった。

子猫が、脅えた目で逃げようとしているのが、目に入った。

その子猫の様子を見て、中学生達は、愉快そうに笑って見せた。

吐き気がした。あんな小さな命を弄んで楽しむことができるだなんて。

怒りで、憎しみで、腹の内が煮えたぎってくる。

瞬間、


「やめろ!!」


僕は、生まれて初めて、腹の底から叫んでいた。

今までだったら、見て見ぬ振りをしていただろうに。

その子猫だけは、助けたいと思った。怖いと思う間もなく、声は自然と出ていた。

あの子猫に、勇気をもらった。そう感じた。


「そんな事をして、何が楽しいんだ!」


そのまま、僕は言葉を続ける。

どうなるだろう、僕は。

こいつらにボコボコにされてしまうのだろうか?

そんな恐怖が脳裏をよぎる。

でも、子猫をこれ以上玩具にさせるわけにはいかなかった。

ここで逃げたら、子猫を助ける人は誰もいないのだ。

震える拳をギュッと握り締め、ゼロに近い勇気を奮い立たせる。

予想に反して、中学生達は、面白くなさそうな顔をしつつも、やがてどこかに去っていった。

そいつらが見えなくなった瞬間、僕はヘナヘナとその場に腰を下ろした。

足が、がくがくと震えて、立てない。

膝が笑うという表現があるが、本当に笑っているようだった。


「情けないな・・・」


自分の膝にさえ笑われているように思え、自分の不甲斐なさを嘆いた。

そんな僕の元に、子猫が脅えながら近づいてくる。

身体が、震えているのがよく分かった。

僕は、子猫を安心させるようにそっと手を伸ばした。

一瞬戸惑いがあったけど、すぐに安心してすり寄ってきて、

いつものように胸のとこにやってきた。

震えが、止まった。


「ゴメンな、来るの遅くて・・・怖かったろう?」


自分も怖かったくせに、平気を装って声をかける。

相手は猫なんだから、そんな取り繕う必要なんて無いのに。

そう思いながらも、何故だろう、子猫の前では、しっかりしているところを見せたかった。

子猫は、そんな僕に対して、返事をするかのように、にゃあ、と鳴いた。

その声を聞いて、安心して改めて子猫を見ると、

体中のいたるところに、殴られたような痣ができていた。

朝見た時は、こんな傷はなかったから、あいつらがやったことは間違いないだろう。

ひどく、申し訳ない気持ちになる。

人間のエゴで、こんな小さな命が弄ばれるなんて。

こいつは、何も悪いことなんてしていないのに。

ただ、自分の存在を主張するために鳴いていただけなのに。

無意識に、子猫を抱きしめる力が強くなっていた。

子猫が少し苦しそうに声を上げたことで、そのことにようやく気付く。


「ゴメンな・・・」


さっき謝ったのとは別の意味で、もう一度、謝った。

何に対して謝っているのか、自分でもよくわかっていない。

だから、全てに対して謝ろう。

すぐに助けにこられなかったこと。

同じ人間が、こんな仕打ちをしでかしてしまったこと。

自分が、何にもできないこと。

とにかく、全てに対して、謝った。

子猫は、また返事をするように、にゃあと鳴いた。

その声を聞くたび、僕は安心する。

明日は、ちょっと奮発して高いエサでも買ってこよう。

それがこいつに対しての贖罪になるかどうかはわからなけれど。

でも、こいつが少しでも喜んでくれるのなら。

そのくらいの出費、大したことはない。

明日が楽しみだ。どんな風に喜んでくれるだろう、こいつは。



そして、次の日。

そんな僕の期待は、無惨にも破られることになった。

学校の帰りにペットショップに寄り、一番高い猫缶を見つけると、

それを二つ購入し、いつもより一本遅い電車に乗って、あの駅に向かった。

昨日の分まで、たくさん遊ぼう。ずっと一緒にいてやろう。

嬉しさで、顔が自然とにやけ、押さえるのに苦労した。

電車が走ること数分、ようやくいつもの駅に到着した。

定期を見せるのさえもどかしく、そのまま二段飛ばしで階段を駆け下りていった。

そして、見た。

昨日の中学生達が、あそこにいるのを。

その時から、既に様子がおかしいことには気付いていた。

でも、気付かない振りをしていた。

気付きたく、なかった。

また、あいつはどこからともなく現れて、にゃあと鳴くに違いないから。

だけど、その声はいつまで経っても聞こえない。

その代わり、耳には、その中学生達の声が届いた。

『何か』を囲んで、つまらなさそうな声で。


「もう終わりかよ、つまんねぇなぁ」


「まぁ、暇つぶしにはなったからいいだろ?」


「でも、もうちょっと逃げてもらわないとなぁ・・・」


セリフの端々から、彼らが何をしたのか、予想はついた。

でも、それが当たることは望んでいなかった。

違う。

きっと、違う。

だけど。

現実は、いつだって残酷だ。

僕は、その場に、買ってきた猫缶を落とす。

金属音が辺りに響き、中学生達がこちらを振り向いた。

そいつらが囲んでいたのは、間違いなく、僕が昨日抱いていた、


子猫だった。


それは、もう、ピクリとも動いていなかった。


気付いたときには、もう、


「うわぁああああ!!」


僕はそいつらに殴りかかっていた。


人付き合いと同じくらい苦手の喧嘩を、初めて自分から売った。

勇気を奮い起こしたなんて、高尚なモノじゃない。

ただただ、憎かった。

憎くて憎くてしょうがなかった。

そして、それと同じくらい、悲しかった。

絶望と言うのは、この感情を言うのだろうか。

それを振り払いたかったのかも知れない。

ただ闇雲に、僕は拳を振り回し続けた。

次に気付いた時には、中学生達が逃げ帰った後だった。

僕も体中痣だらけだったけど、そんな事はどうでもよかった。

震える足で、子猫の元へと近寄る。

いつものように呼んでみる。

もちろん、子猫は目覚めない。

身じろぎ一つしない。

ひどい有様だった。

体中血だらけで、元が何色だったのか、わからなくなっていた。

蹴り飛ばされたのだろうか、足が不自然な方向に折れ曲がり、

その小さな背には、無機質な鈍い光を放つボウガンの矢が、無造作に突き刺さっていた。

矢が引き抜かれた時にできたのであろう穴からは、

赤黒い肉や内臓が見え隠れしていて、

道路の至る所に、子猫の赤黒い血と、内臓が飛び散っていた。

一緒に、魂まで引き抜かれてしまったのだろうか。

そう思えるほど、子猫の身体は、小さく、痩せ細って見えた。

まるで、夢の中にいるような気分で、僕はその光景を見つめていた。

足元の、泥だらけで血塗れになったその小さな身体を、そっと持ち上げる。

今までなら、服に血が付くとか、臭いとかで、動物の死体には寄りもしなかった。

けれど、今は、そんな風に考えていた自分が、ひどく情けなく思えた。

いつもしていたように、けれど、いつもより幾分強く、子猫の身体を抱きしめる。

胸が引き裂かれるほど、辛かった。悲しかった。申し訳なかった。

それが、結晶となって、瞳からこぼれ落ちる。

辛くなるくらいなら、悲しくなるくらいなら、最初から優しくしなければいい。

そんなの、最初から分かっていた。

この子猫が、どんな形であれ、いつか死んでしまうことくらい、分かっていた、つもりだった。

それでも。

自分が生まれてきたことを、必死に世界に呼びかける為に鳴き続けていたあいつを、

無視する事なんて出来なかった。出来るわけが、ない。

辛くなってもいい、悲しくなっても構わない。

ただ、他の誰もが認めなくても、せめて僕だけは、あの子猫がいたことを認めたかった。

認めてやりたかった。

きっと、その為にあの子猫は、あんなになるまで鳴き続けていたんだから。

誰にも存在を認められないまま死んでいくなんて、その方がよっぽど悲しすぎるから。


雨が降ってきた。

初めてこの子猫と過ごした夜のように。

それは、あの日と同じように、あっという間に土砂降りになる。

頬を伝っているのが、涙なのか、雨なのか、分からなくなるほどに、強く、強く。

やがて、雨が全身を覆い尽くそうとも、それでも僕はそこから離れようとはしなかった。

子猫を抱きしめ、ただ、ひたすらに泣き続けた。

生きよう。

こいつが見られなかった世界を、こいつの分まで見るために。

例え、この先、今日のように辛く、悲しい出来事があったとしても。

僕は、それから目を背けずに、生きなければならない。

あの子猫は、それを教えるために、僕に向かって鳴いたのかも知れないから。

子猫を思いっきり抱きしめる。


降りしきる雨は、いつまでもその涙を止めようとはしなかった。

涙は、止まらなかった。



電車が向こうからやってくる。今日もまた始まる退屈な日常。

でも、それも今日で終わりだ。いつまでも泣いていられない。

僕も、勇気を出そうと思う。あの子猫のように。

世界に向かって、自分はここにいるよ、と、鳴いてみようと思う。

それは、臆病な僕にとって、とても、とても勇気のいることで。

一つ間違えたら、どうなるかは、分からない。

けど。

ここで止まっていたら、あいつに申し訳ないから。

僕になついていた子猫。

どんな飲み物よりも、ホットミルクココアが大好きだった、不思議な猫。

何よりも誰よりも、僕にいろいろなモノを与えてくれた、大切な友達。

そんなあいつの為にも。

嘆いて、何もしないなんていう今までの自分は、やめるんだ。

プラットホームへと続く階段を、一気に駆け上る。

手には、まだ温かいホットミルクココアを持って。

階段を上りきると、ホームにはちょうど電車がやってきたところだった。

電車の入り口へと向かいながら、ホットミルクココアのプルタブを開け、口に含む。

その時、どこからか、にゃあ、とあの鳴き声が聞こえたような気がした。

しかし、辺りを見回してみても、あの小さな身体は見つかるはずもなく。

それでも僕は、小さく微笑んで、返事をするかのように、そっと呟いた。


「行ってきます」


口の中に広がったあの日の思い出が、僕の背中をそっと押した。



                    - 了


あとがきのあとがきだとか -

どうも、アキです
あとがきのあとがきたぁどーいうこっちゃ?
と、言うのも、これ書き直すの実は二度目だったりするんですよね
だから正確にはあとがきのあとがきのあとがき・・・
まぁ、一回書き直したときにはあとがきは書き直さなかったので
にしても、友人に言われて、改めて書き直したのですが
やー、粗の多いこと多いこと
なんだかいろいろと直しちゃいました
ついでに、やたらとクサイことばかり書いてたあとがきも・・・
まぁ、改めて読んでくださる方も、新しく読んでくださる方も感謝感激なわけでして
楽しんでいただけたらコレ幸い
そんなわけで、でわでわ

03/03/27

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∠short  ∠index